2020年6月26日
セールス(営業)マニュアルの作り方

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前回セールス(営業)マニュアルの種類や目的に関する記事をお届けしましたが、セールスマニュアルには、これといった正解はありません。
基本的なビジネスマナーなどは除き、属人化しやすい営業スキルを標準化するのはとても難しく、取り扱っている商材やターゲット、業界、自社の企業文化などにより、その内容はそれぞれ大きく異なり複雑です。
また営業部門だけではなく、販促や経理、生産管理や在庫管理、物流など多くの担当部署との連携や確認も必要になります。
しかし、マニュアルを作成することで、営業スキルの底上げと業務の効率化は少なからず可能になります。
そこで今回は、セールスマニュアルの作成手順、注意点などをご紹介していきたいと思います。
セールスマニュアル作成の工程
では、何から手をつけていけばよいのでしょうか。ここからはマニュアル制作の流れを順序立てて説明していきます。
1.方針・企画の確定
セールスマニュアルを本格的に作成することは予想以上に手間がかかります。
担当者へのヒアリングや業務内容の整理は骨が折れる作業ではありますが、当初の目的を念頭に、制作を進めてください。
先日も述べたとおり、目的や方針をまずは念頭においてください。
完成したセールスマニュアルの良否は、最初の段階においてしっかりとした方針が立てられているかどうかで決まります。
方針を確定するにあ当 たって明確にしておかなければならない事項は、次のようなものです。
(1)目的とセールスマニュアルに期待するもの
(2)誰を対象として作成するか
(3)各項目の重み付けと順序の取り決め
(4)編集方式の決定
(5)体裁の決定
(6)制作担当者の決定
セールスマニュアルの作成には、専門的な知識と経験が要求されますし、文章における表現能力の優劣も重要です。
制作チームは、販売促進担当や営業担当の幹部あるいは教育を担当する部門の幹部が中心となることが多く、これに技術関係者、ベテランの営業マン、経理担当者などの関係者が協力して作成します。
このほかに、作成の準備段階においてあらかじめ十分に考慮すべきことは、以下のとおりです。
スケジュールの策定
マニュアルの目的に応じて、新入社員の研修期間に合わせて作成するのか、展示会または季節的なキャンペーン用として作成するのか、など、完成日の目標を確認します。
制作環境と使用環境
マニュアルを作成する環境もマニュアルの質に影響します。また完成したマニュアルがどこで使われるかも考慮する必要があります。
また、どのような形式にするかも重要事項です。
形式としては、ルーズリーフ形式、カード形式、手帳形式、メモ形式を利用して作成します。 (ときにはビデオ形式を併用するのも良いでしょう) いつでも手元における、書き込める、などわかりやすさと使いやすさを重視してください。
by セールス(営業)マニュアルとは?業務内容や役職 にみるそれぞれの目的と役割
手帳形式など冊子にする場合は、印刷会社への依頼も検討しなければなりません。しかし、印刷の場合、改定のたびに大きな費用がかかります。
基本的には、PowerPointやWordなど、自分たちで修正が可能なアプリケーションを用いて作成し、改定した箇所のみを簡単に差し替えられるルーズリーフ形式を採用することが多いです。
予算
どれくらいの経費で作成できるのかも重要です。
マニュアルは、金のかかったものがよいとは一概にいえません。必要なものを簡潔にまとめることが大切になります。
2.ヒアリング、材料・資料の収集
まずは、参考として同業または類似他社のマニュアル、セールス関係、参考書、官庁、業界、社内の統計などの資料収集から始めます。
その上で管理職、営業マンからの職務内容のヒアリングを行います。営業の職務内容を十分に調査、整理し、関係者の意見も取り入れ、できれば外部の専門家のアドバイスを取り入れましょう。
特に現場関係者の意見は最重要、できるだけ実情に合ったものを作成することが大切です。
3.作文・編集
ヒアリングを始め十分な材料、資料が集まったら、これを整理して編集する作業に入りますが、専門別、部門別に分業することが効率的です。
文章、文体はできるだけ簡潔なものとし、一般的でない外国語などの使用はできるだけ避け、口語体でまとめます。
また、マンガなどを利用すると親しみやすい内容になるでしょう。
4.印刷・配布
体裁や印刷の形式については、作成部数、作成予算、作成日数、使用目的などを考慮に入れたうえ、最適なものを選びます。
改定のしやすさも重要です。最近では印刷ではなくPDFなどの形式で配布することもあります。
セールスマニュアルには、営業戦略事項など、コンフィデンシャルな内容も含まれるため、配布に当たってはナンバリングなどで配布先を管理することも検討します。
5.見直しと改定
マニュアルは作ったらそれで終わりではありません。
作成されたマニュアルもその目的によって、長期間継続して使用されるもの、展 示会などの一時期のみの使用で終わるものなどいろんなパターンがあります。
継続使用を目的として作成されたものは、原則として年一回は点検する必要があります。
また、実際の使用、活用状況について適時調査を行い、必要に応じて改訂していくことが長く使われるマニュアルのポイントです。
作成時の注意点とは
実際に作成を進めていくなかで、注意すべき点をまとめました。
1.何でも分かるようにする
「困ったときにこれを読めば何でもわかる」ような存在であること。セールスマニュアルは、セールスマンにとって常に身近に置くハンドブック(辞書)のようなものに作成されなければいけません。
セールスマンに必要な法律、経済知識、業界の事情、ビジネス用語、マーケティング技術など分からないことはそのマニュアルを開けば、何でも分かるというようにしておけばマニュアルに対する利用度と信頼度は高まります。
2.販促ツールとして活用できるようにする
商品などのセールスポイントや他社製品との比較資料、応用使用例など、セールス・ツールとなれば活用されやすくなります。
WordやPowerPointなど編集可能なアプリケーションで作成すれば、このようなアレンジがしやすくなるでしょう。
3.最新のマーケティング情報を反映させる
市場は絶えず変化しており、特に最近の環境変化は激しくなっています。
市場にマッチしないマニュアルは使用されなくなります。
そのため、作成者のセンスを磨き、マーケットの事情に明るい人、若い世代の人を編集に加えて作成することが必要です。
4.現場に密着した材料を多く集める
ヒアリングについては先に触れましたが、現場の声が一番大事です。
現場のリアルな声や事情など新しい材料をできるだけ多く集めて、実態に合ったマニュアルを作成します。
5.実際の使用効果を確かめる
利用価値があると信頼されるためには、実際に現場で使用して効果を試してみることが大切です。管理者、営業マン両方の意見も参考にしましょう。
6.最初からあまりレベルの高いものを望まない
営業の現場では、完璧なマニュアルなど存在しません。
教育効果の点からみて、全体的に多くの営業マンのスキルの底上げを目指すほうが効果的です。
最初から完璧を望んでも無理で、逐次ブラッシュアップし、完全なものに近づけていくほうが実際的です。
セールス(営業)マニュアルの作り方 まとめ
セールスマニュアルに限らず、最初のマニュアル制作は手間も時間もかかります。
しかし、経験・ノウハウが蓄積されていくことで、いずれは効率的に作業できるようになるはずです。
また現場のフィードバックも重要です。「ここが使いにくい」「この観点が抜けている」など常に現場の声を拾い上げていきましょう。
また現状の市場観測も含め、どうしたら売れるか、といったマーケティング視点も大事です。教育的観点だけでなく、営業マンをアシストできるマニュアルづくりを心がけましょう。
