2023年7月31日

フローチャート(フロー図)の書き方とは?作成のポイントと記号の使い方

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フローチャートとは?

フローチャートとは、業務手順やシステム処理の流れを図形や矢印を用いて表した図のことで、「フロー図」「流れ図」とも呼ばれています。

フローチャートを作成することで業務やシステムの全体像を見渡せるようになるため、構造や仕組みの理解促進や複数メンバー間での業務内容の共有に活用されています。

また、フローチャートはマニュアルとしてもよく使われており、フローチャートに沿って業務を進めていくことで属人化の防止や業務の効率化につながるというメリットもあります。手順やタスク内容だけでなく条件分岐も示すことができるため、イレギュラー発生時などの状況に合わせた判断が可能です。

そこで今回は、フローチャートの書き方と図形(記号)の使い方についてご紹介いたします。

フローチャートで使われる主な図形・記号

フローチャートでは手順や流れを図形・記号を用いて表現しますが、これらの図形・記号の一部は「情報処理用流れ図・プログラム網図・システム資源図記号 JIS X 0121 – 1986」という JIS規格(日本産業規格)で定められており、それぞれ特定の意味や機能を持っています。

JIS規格によって図形・記号の形や機能が標準化されることで、フローチャートごとに使われる図形・記号がバラバラになってしまうことを防ぎ、どのフローチャートを見てもスムーズに意味が伝わるようになっています。

端子

フローチャート_端子

「端子」は角丸の四角形もしくは楕円形の記号で、フローの開始(始点)と終了(終点)を表しています。開始の端子では「どのようにフローが始まるのか」というきっかけを、終了の端子では「どのようにフローが終わるのか」という結果や目標を示します。

処理

フローチャート_処理

「処理」は四角形の記号で、各プロセスの作業内容や操作、タスクを表しています。フローチャートで最もよく使われる記号です。

ボックスの中には「書類を送付する」「データを入力する」など具体的な作業が入りますが、一つのボックスの中に複数の処理を記載してしまうとわかりにくくなってしまうため、基本的には一つのボックスにつき一つの処理とするのが望ましいでしょう。

判断(条件分岐)

フローチャート_判断

「判断」はひし形の記号で、プロセスの途中で「はい/いいえ」「ある/なし」などの条件によってフローが変わる場合に使用します。

ひし形の中には「請求書が届いているか」のように分岐条件を記載し、ひし形から引いた矢印には「はい」「いいえ」のように判断基準となる選択肢を記載します。選択肢が三つ以上の場合でも使用できます。

線・矢印

フローチャート_線・矢印

「端子」「処理」「判断」といった記号の間は線・矢印でつなぎます。作業が並行して進んだり順序を明確にする必要のない場合は「線」、時系列や流れに沿って進む場合には「矢印」が使われます。

ループ

フローチャート_ループ

反復処理や繰り返し行う作業の場合は「ループ」を使用します。ボックスの中に終了条件を記載し、ループの開始と終了の記号の間に繰り返す処理を配置します。

定義済み処理・サブプロセス

フローチャート_定義済み処理

「定義済み処理(サブプロセス)」は四角形の両端に線が引かれた記号で、一部の処理を別のフローとして分けて記載する場合に使用します。

複雑な業務の場合フローチャートが長くなってしまったり分岐が煩雑になるケースもありますが、定義済み処理を使用することで業務を分けて記載できるため、フローチャートが整理され見やすくなります。

データベース・システム

フローチャート_データベース

処理を行った情報がデータベースやシステムに保存されることを表した記号です。業務で使用しているデータベースが複数ある場合は、データベースやシステムの名称もあわせて記載します。

フローチャートの書き方

フローチャートは専用のツールやサービス、PowerPointやExcelなどを使って作成することができます。今回はレストランでの接客フローを例に、フローチャートの書き方をご紹介していきます。

1.目的と対象者を明確にする

まずはフローチャートを作成する目的と対象者を明確にすることが大切です。「何のために」「誰のために」を明確にすることで記載内容や業務範囲もおのずと見えてくるため、情報の細かさや強調部分といった方向性を固めることができます。

今回の例の場合、「接客方法に関するフローチャート」のため、調理方法やバックヤード業務、清掃作業に関しては細かく記載する必要がないことがわかります。

また、例えば新人向けマニュアルとして使用する場合は、社内用語や専門用語をなるべく使用しないといった注意も必要です。

2.関係部署・担当者を洗い出す

業務に関係している部署や担当者を洗い出します。今回の例であれば、関係者は「ホールスタッフ」「キッチンスタッフ」「お客様」です。接客方法のフローチャートではありますが、キッチンスタッフとの連携が必要になる業務もあるためここではキッチンスタッフも記載することとします。

関係者や担当者が明確になったら、担当者ごとに分けて横軸(スイムレーン)を設定していきましょう。

フローチャート_スイムレーン

3.業務工程・作業内容を洗い出す

関係部署や担当者を洗い出し横軸(スイムレーン)に記入したら、次は業務の開始から終了までの業務工程や作業内容をリストアップしていきます。今回の例の場合は、「席への案内」「注文」「調理」「料理の提供」「会計」「片付け」などが挙げられます。

時系列に沿って、どの作業がいつ発生するのかを細かく洗い出していきましょう。洗い出した業務内容は横軸に沿って、「上から下」もしくは「左から右」へと時系列順に配置していきます。複数の担当者や部署にまたがる場合は、先ほど作成したレーンの中から該当する部門に配置します。

フローチャート_業務の洗い出し

4.フローを設計する

業務を一通り洗い出し時系列順に配置したら、それぞれの業務に最適な図形の設定を行い、処理(業務)同士を矢印で結んでいきます。その際、先ほど洗い出した業務において条件分岐や反復作業(ループ)、サブフローなどがないかどうかを確認し、ある場合は該当する記号を使って明記するようにしましょう。

今回の例では、「調理」や「会計」をサブフローとし、「アレルギーの有無」を分岐条件として設定しました。

フローチャート_作成方法
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フローチャート作成のポイント

必要な情報を整理する

フローチャートを作成するにあたっては事前に情報の範囲を定め、作業ごとの情報の粒度をそろえることが大切です。

例えば、先ほどのレストランの接客フローの例で言うと、「会計」の部分をより細かく説明し、「金額を伝える」「レジを打つ」「お金を受け取る」「おつりを渡す」という業務まで細分化したとします。この場合、他の「注文をとる」「料理を提供する」といった他の業務よりも「会計」に関する業務だけが細分化されており、情報の粒度が統一されていないことがわかります。

詳細に説明したい場合は別フローやマニュアルで対応し、フローチャートにタスクとして書き出す業務は作業レベルや細かさがそろうように心がけましょう。

使用する図形(記号)は最低限に絞る

フローチャートではタスクに合わせてさまざまな図形が使われますが、使用する図形の種類が多すぎるとどの図形が何を表しているのかわからなくなり、かえって理解しにくくなってしまいます。

フローチャートはシンプルさを心がけ、記号の種類は最低限にとどめておくのがよいでしょう。

業務の流れを複雑化しすぎない

フローチャートは視覚的に業務の流れを理解できるツールですが、業務の流れが煩雑だったり、作業工程が多すぎたりすると混乱の原因になりかねません。

不要な工程は省略し、複雑な業務は複数のフロー図に分けるなど、一つのフローチャートの中に情報を詰め込みすぎないようにしましょう。他の業務との関連性をわかりやすくするために、サブプロセスや外部参照を用いるのも一つの方法です。

線の交差はなるべく避ける

フローチャートではそれぞれの処理を時系列に沿って矢印で結んでいくので、配置によっては矢印線同士が交差するケースも出てきます。条件分岐がある場合など多少の交差は仕方ありませんが、あまりにも線の交差が繰り返されていると、どの処理とどの処理がつながっているのか、どの順番に進んでいくのか、理解が難しくなってしまいます。

矢印線の交差や図形の重なりは最小限になるようにし、重なってしまう場合には各処理の配置を工夫したり、業務フロー自体を見直すようにしましょう。

まとめ

今回は、フローチャートの書き方とそのポイントについてご紹介いたしました。

一つのフローチャートに情報を詰め込みすぎて煩雑になってしまうとかえってミスやトラブルの原因にもなりかねないため、誰が見てもわかるようにシンプルかつ簡潔にまとめることが大切です。

細かい業務内容や作業指示を記載したい場合には、マニュアルとあわせて活用することでより業務の効率化や属人化の防止が期待できるでしょう。フローチャートを作成する中で業務の課題や改善点が見つかることもありますので、ぜひ参考にしてみてください。

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