2023年11月17日

機械翻訳の精度を上げるには?賢く英訳する19のポイント

この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。

近年、グローバル化によって多言語化が求められる場面が増え、翻訳サイトなどを使って翻訳する機会のある方も多いのではないでしょうか。

最近ではAIの発達もあり、機械翻訳の精度は上がっていますが、それでもやはり「どうしても不自然な文章になってしまう」「意図がうまく伝わらない」といったケースもまだまだ少なくありません。

普段の会話やコミュニケーション手段として翻訳を利用する場合であれば多少違和感のある内容でも問題ありませんが、ビジネスなどにおいてはできる限り正確性を求めたいですよね。

翻訳会社に依頼したり、ネイティブチェックを受けるのが一番ではありますが、機械翻訳を使う場合でもちょっとしたポイントに気を付けるだけで精度が格段に上がります。

そこで今回は機械翻訳を賢く使うための19のポイントをご紹介いたします。

▼マニュアルの翻訳については以下の記事も参考にしてください。

日本語の特徴と機械翻訳の特徴とは?

まずは、日本語と英語の違い、人間による翻訳と機械翻訳の違いを改めて理解しておきましょう。
これらの違いと特徴を理解しておくことで、機械翻訳をより賢く使うことができます。

日本語と英語の違い

日本語と英語には主に以下のような違いがあります。機械翻訳の原文となる日本語を作成する際には英語に合わせた表現を意識しましょう。

日本語英語
曖昧な表現が多い、明言を避ける直接的、断定的な表現
省略語(主語など)が多い省略語が少ない
S(主語)+O(目的語)+V(動詞)S(主語)+V(動詞)+O(目的語)
文が長くなりやすい比較的短文で簡潔
無生物はほぼ主語にならない無生物も主語になる
結論を最後に言う結論を先に言う

人間による翻訳と機械翻訳の違い

人間による翻訳と機械翻訳のもっとも大きな違いは「書かれていない部分を推測して補えるかどうか」です。
基本的に機械翻訳では原文に書かれていない内容を訳すことはできないため、省略部分を補足して書く必要があります。

人間による翻訳機械翻訳
行間を読むことができる行間を読むことができない
文脈から不足部分を補える文脈から不足部分を補えない
原文に誤字脱字があっても翻訳できる原文に誤字脱字があると翻訳できない
マニュアル作成や取扱説明書の作成ならマニュアル制作.com

機械翻訳を使うときのポイント

1.長文を避け、なるべく一文を短くする

機械翻訳利用時の最も基本的なポイントは「文を短く切る」ことです。日本語の特性上、一つの文の中に複数の話題を盛り込むことができますが、一文が長くなると文の構造が複雑になり、翻訳した際に誤訳されやすくなってしまいます。

「~ので」「~だが」が多用されている場合などは、句点で区切り、一文を短くすることを心がけましょう。

(例)大型台風の接近により、大気の状態が不安定であり、
   各航空会社が今日の便の欠航を発表している。
             ↓
   大型台風の接近により、大気の状態が不安定である。
   そのため、各航空会社が今日の便の欠航を発表している。

2.省略されている箇所を補う

日本語では主語や目的語などを省略しても意味が伝わるケースが多いですが、機械翻訳では原文の省略部分を補って訳すことが難しく、正しい意味が伝わらなくなってしまう可能性が高いです。

機械翻訳の原文となる日本語を作成する際には、主語や目的語などの省略されている部分を補足することで、より正確な翻訳結果になります。

(例)ご応募をお待ちしております。
         ↓
   皆様のご応募をお待ちしております。

3.具体的な動詞を使う

「~になる」「~を行う」「~する」といった動詞はさまざまな主語や目的語に対して幅広く利用されますが、機械翻訳においては正しく翻訳されないケースもあります。

他の動詞に言い換えができる場合は、限定的な意味の動詞を使うのがおすすめです。

(例)眼鏡をする。
     ↓
   眼鏡をかける。

4.不要な言い回しや曖昧な表現を避ける

日本語では「~ということ」「~ものである」「~したいと思う」などの曖昧な表現がよく使われますが、機械翻訳を利用する際にはこのような言い回しは避けるようにしましょう。

(例)焦っても良い結果は生まれないものである。
          ↓
   焦っても良い結果は生まれない。

5.なるべく漢字に変換する

日本語は英語と違って単語と単語の間にスペースがないため、ひらがなばかりだと機械翻訳の際に単語の切れ目がうまく判断されません。漢字に変換できる部分はなるべく漢字に変換してから機械翻訳を利用するようにしましょう。

(例)きょうとあしたいこうとおもいます。
          ↓
   今日と(きょうと)明日行こうと思います。
   京都(きょうと)明日行こうと思います。

また、同音異義語などの変換ミスがある場合でも、機械翻訳だとそのまま翻訳されてしまいます。翻訳結果がおかしいと感じたら、漢字の誤りを確認してみてください。

(例)意味深長
   Meaningful
     ↓
   意味慎重
   meaning carefully

6.適切な助詞を使う

文中の助詞「てにをは」に気をつけるだけで、翻訳精度が格段に上がります。

特に「ウサギは耳が長い」の「は」のように、主格を表さない「は」や、「子供達の帰った後に」の「の」のように、主格を表す「の」は要注意です。日本語としては意味が通じますが、英語では翻訳結果が変わってきます。

(例)この分野に関する特許は取得が難しい。
          ↓
   この分野に関する特許の取得は難しい。

7.定着していない略語は使用しない

「エアコン」「パソコン」などすでに広く定着している略語は問題ありませんが、略語によっては正しく翻訳されないケースもあります。

専門用語も同様に、機械翻訳では意味が正しく伝わらない場合があるため、他の単語に言い換えるのも一つの方法です。頻繁に使う専門用語や固有名詞はユーザー辞書に登録しておくのもよいでしょう。

(例)タイパ
   Taipa
    ↓
   タイムパフォーマンス
   time performance

8.係り受けを明確にする

「主語と述語」「修飾語と被修飾語」など、どの語句がどの語句に係っているのかという関係性を明確にすることも重要です。

人による翻訳であれば文脈から内容を読み取ることができますが、機械翻訳の場合には複雑な文脈構造を正しく読み取れず、本来の意図とは違う解釈で訳されることもあります。語順を変えるなどして、誰が見ても明確に解釈できる文章にしましょう。

(例)彼は新発売のお菓子と弁当を買った。
         ↓
   彼は弁当と新発売のお菓子を買った。

9.重複表現を避ける

機械翻訳に限ったことではありませんが、内容が重複していると意味が理解しにくく、誤訳の元になってしまいます。簡潔な表現を心がけましょう。

(例)記入の際には注意事項をよく読んでから記入してください。
            ↓
   注意事項をよく読んでから記入してください。

10.慣用表現や比喩表現は避ける

ことわざや四字熟語など日本語特有の慣用表現は、機械翻訳では意味が伝わらず誤訳の原因になります。例えば「鼻が高い」という表現はGoogle翻訳にかけると「high nose」という訳になってしまうため、ニュアンスが伝わりにくい比喩表現などは他の表現に言い換えるのがよいでしょう。

(例)私にとっては朝飯前だ。
   It’s just breakfast for me.
        ↓
   私にとっては簡単だ。
   It’s easy for me.

11.複雑な複合語を避ける

「海風」「考え事」など2つ以上の単語が組み合わさってできた名詞を複合名詞、「走り回る」「近寄る」など2つ以上の単語が組み合わさってできた動詞を複合動詞と言います。

上記のような複合語であれば問題ありませんが、単語が多数組み合わさっている場合、機械翻訳では複雑な単語の塊を分けて読み取ることが難しく、誤訳の原因になってしまいます。簡単な表現に言い換えるようにしましょう。

(例)発車時前方安全確認
        ↓
   発車時に前方の安全を確認する

12.造語を避ける

日本語では「~的」「~性」「~化」などを使った造語がよく見受けられますが、機械翻訳ではそのニュアンスが認識されにくいです。

(例)コストパフォーマンス性に優れたパソコン
   Cost performance of the excellent personal computer
            ↓
   優れたコストパフォーマンスのパソコン
   Excellent cost performance of the personal computer

13.無生物主語を使う

英語には無生物主語の表現があります。無生物が主語の場合は、それを意識した書き方にすると、きれいに翻訳されやすくなります。

(例)マニュアルによって業務が効率化した。
          ↓
   マニュアルが業務の効率を上げた。

14.擬音語・擬態語の使用は避ける

「雨がしとしと降る」「鶏がコケコッコーと鳴く」のような擬音語・擬態語の使用も避けた方がよいでしょう。日本語と英語では擬音が異なっているケースが多く、機械翻訳ではニュアンスがうまく伝わらないこともあります。

(例)犬がワンと吠える
     ↓
   犬が吠える

英訳後に編集するときのポイント

単数・複数や冠詞など、日本語にない要素については、英訳後に必要に応じて編集が必要です。ここでは英訳後の編集のポイントについてご紹介します。

1.単数・複数の確認

原文に「多くの」や「三人の」といった複数を示す情報があるときには複数形で翻訳されますが、特に情報がないものは単数・複数が適切に訳されない場合があります。

(例)
原文:教授が学生に対して哲学を講義している。
訳文:Professor is lecturing the philosophy to a student.
後編集:Professor is lecturing the philosophy to students.

2.冠詞の確認

「a」「an」「the」のように名詞が特定のものかどうかを判断するための単語を冠詞と言います。「冠詞がつくかどうか」という定冠詞/不定冠詞の判断は日本語では難しいため、翻訳後に確認して編集しましょう。

(例)
原文:領収書を受け取った。
訳文:I received a receipt.
後編集:I received the receipt.

3.時制の確認

日本語には、仮定文や現在完了形、過去完了形といった細かい時制のルールがないため、英訳後には時制が正しく反映されているかどうかをチェックする必要があります。

(例)
原文:子供だったころから私は彼のことを知っている。
訳文:I know him since I was a child.
後編集:I knew him since I was a child.

4.代名詞の確認

日本語においては「this」「it」「he」「you」といった代名詞は省略されるため、英訳後に文脈に合っているかを確認するとよいでしょう。

(例)
原文:回答ありがとうございます。
訳文:Thank you for an answer.
後編集:Thank you for your answer.

5.前置詞の確認

「at」「to」「for」「from」などの前置詞は、単語によって最適なものが異なります。機械翻訳の場合、文脈によっては適切な前置詞が使われない場合もあるので、英訳後に確認が必要です。

(例)
原文:この机は木から作られている。
訳文:This desk is made from wood.
後編集:This desk is made of wood.

まとめ

今回は機械翻訳を賢く使うためのポイントをご紹介いたしました。

正確に間違いなく翻訳したい場合は、翻訳会社やネイティブチェックなどを利用して人の手で翻訳するのが望ましいですが、機械翻訳をうまく織り交ぜながら、足りない部分を人の手で補うのも一つの方法です。

日本語と英語は文章構造が異なるため、機械翻訳を使って完璧に翻訳を行うことは難しいですが、ちょっとしたポイントを押さえるだけでも精度が格段に上がります。

ぜひ今回ご紹介したポイントを意識して機械翻訳を上手に使ってみてください。

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