2015年8月24日

メリットデメリットでわかるオンデマンド印刷が伸びる理由と背景

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

今後オンデマンド印刷は増えていく

以前、オンデマンド印刷とオフセット印刷の違いというお話をしました。

もともと印刷といえばオフセット印刷が主流でした。そのため、わざわざオフセット印刷という言葉を使わずに「印刷」だけで良かったのですが、オンデマンド印刷が登場してからは、オンデマンド印刷とオフセット印刷は2大主流になっています。

もちろん、それぞれ特徴があるため、目的に合わせて最適な印刷方法を選択していかなければなりません。

参考:オンデマンド印刷とオフセット印刷の違いとは?安さ、品質を比較してみた

この内容を読めば、これまでの印刷手法であるオフセット印刷と、新しく登場したオンデマンド印刷の違いを知ることができます。

もしあなたが印刷を依頼する場合は、オンデマンド印刷とオフセット印刷の違いを理解し、最適な方法を選ぶべきです。

さて、印刷業界では、今後ますますオンデマンド印刷が増えていくと予想されているのですが、それはなぜなのでしょうか。

今日は、今後増えていく印刷手法「オンデマンド印刷」の背景を、メリット、デメリットを理解して、考察していきます。

オンデマンド印刷のメリット

メリット01

オンデマンド(On-Demand)とは、「要求に応じて」という意味があります。つまり、必要なものを、必要な時に、必要な量だけ印刷できるのが、オンデマンド印刷が持つ特徴だということです。

では、オンデマンド印刷を活用することで、具体的にはどういったメリットが考えられるでしょうか。顧客メリットと業者メリットにわけて考えてみましょう。

顧客メリット1.小ロット印刷が可能

従来の印刷ではできなかった、10部、100部などの小ロット印刷が可能です。

顧客メリット2.印刷物の場所をとらない

紙は意外と場所をとります。スケールメリットを出そうと数千部、数万部を発注してしまうと、社内のスペースコストの方が嵩んでしまいます。

顧客メリット3.内容差し替えに素早く対応できる

従来の印刷とは違い、内容の差し替えが比較的簡単なため、その時に必要な分だけ印刷して、修正したらまた必要な分だけ印刷するということができます。

顧客メリット4.発注から印刷までが早い

従来印刷と比べて、発注から印刷物のできあがりまでが早いため、今日依頼して明日使いたいということも可能です。

印刷業者メリット1.印刷設備コストが安い

業者メリットの1つめは、設備コストが圧倒的に安くなるということです。

オンデマンド印刷機で500万~1,000万円、オフセット印刷機だと輪転機で1億~2億円……。

参考:メリットデメリットでわかるオンデマンド印刷が伸びる理由と背景

印刷機の価格差で10倍以上になることもあります。

印刷業者メリット2.設備スペースをとらない

オンデマンド印刷機は、これまでの印刷機と比べて、設備スペースが圧倒的に縮小されます。

オフセット印刷機は大量の印刷を行うため、大きなもので20メートル以上、高さも3メートルほどあったりします。見た目は工場にある機械そのもの。

逆にオンデマンド印刷機は、大きなものでも4~5メートル、高さも2メートル以下で、見た目は大きくスタイリッシュなコンピューターという感じです。

参考:オンデマンド印刷とオフセット印刷の違いとは?安さ、品質を比較してみた

これまでの印刷会社は、オフセット輪転機を置くためにわざわざ工場を増設したり、土地まで借りたりして印刷機を用意しなければいけませんでした。

印刷業者メリット3.オペレーターが必要ない

これまでの印刷機には、動かすためのオペレーターが張り付いていなければいけませんでした。

オンデマンド印刷機であれば機械を動かすためにオペレーターが付いている必要はなく、無駄なコストはかかりません。

オンデマンド印刷のデメリット

デメリット01

もちろんオンデマンド印刷は、メリットばかりではありません。顧客にとって利便性があがり、印刷業者にとってコストカットにつながるとは言え、デメリットを理解しておかないとリスクが発生してしまいます。

顧客デメリット1.ロットが大きくなるほど損する

メリットの逆です。小ロット印刷が得な分、大ロット印刷では単価が高くなってしまいます。

顧客デメリット2.オフセット印刷に比べて質が落ちる

近年は差がなくなってきましたが、やはりオフセット印刷に比べると、オンデマンド印刷は画質が劣ります。画質が劣るため、以下のような問題が生じます。

飲食店のメニューを手に取った顧客が、フレッシュな野菜やフルーツの色に何となく違和感を感じて「あれ?この店あんまり美味しそうじゃないな。」と思われてしまうことをどう考えるでしょうか。

参考:売上にも影響?RGBとCMYKの違いと注意点

印刷業者デメリット1.大量印刷ができない

オンデマンド印刷機自体が大きくないため、小冊子を一度に何万冊も刷ることはできません。

もし仮にオンデマンド印刷機のみの印刷会社であれば、大ロットの発注の際は外注に出してしまうか、そもそも受注が困難になってしまいます。

印刷業者デメリット2.大判印刷ができない

多くのオンデマンド印刷機がA3までしか印刷することができません。そのため、比較的需要の高いB3チラシを受注することはできません。

印刷業者デメリット3.印刷会社としての競合が出やすい

オンデマンド印刷機自体が安く、スペースを必要としないため、競合は生まれやすくなっています。

印刷市場では、印刷業務単体での競合は考えにくいですが、デザイン会社やコンサル会社がオンデマンド印刷機で、顧客要望を叶えることは十分に考えられます。

オンデマンド印刷のメリットとデメリットでわかる背景の考察

オンデマンド印刷のメリットとデメリットを理解しておけば、印刷物の向き・不向きもわかるかと思います。

パンフレット、リーフレットなど広告に近い販促物だけではありません。

たとえば、社内報、限定会員向け雑誌や紙のノベルティ、結婚式での手作り席次表、飲食店のメニュー、卒業式の文集などの表紙、同人誌、写真付きテキスト教材など、部数は多くなくても印刷が必要な媒体は非常にたくさん存在します。

そして、これらオンデマンド印刷にマッチした印刷物は今後ますます増えていくでしょう。

理由は、さまざまな業界において今以上に二極化が進んでいくことが予想されるためです。

良い悪いの二極化ではなく、大きなビジネスと小さなビジネスの二極化です。大企業は合併を繰り返してグローバルに業務を展開し、中小企業は独自のサービスとサポートを手厚くして、ニッチでニーズが高い業務を展開していくはずです。

この流れがある中で印刷業界も同様に、大規模で大ロットの印刷を得意とする企業と、販促の手伝いをしながら小規模で小ロットのソリューション印刷に対応する企業に分かれます。

その時に、オンデマンド印刷の特性を理解して顧客ニーズに柔軟に対応できない中小印刷会社は確実に淘汰されます。

そして、オンデマンド印刷が得意な会社は、オンデマンド印刷の特性を活かしたソリューションを提供していくはずです。

これは逆の見方をすると、あなたにとって、事業の助けとなるソリューションや販促ノウハウを十分に培った印刷会社を見つけるチャンスになります。

今後、私たちの印刷業界は、このオンデマンド印刷を1つのターニングポイントとして、大きく変わっていくのでしょう。

より深くオンデマンド印刷について知りたい場合は、以下の記事をご参考に。

一般的な印刷の工程とデジタル印刷の工程の違いとは