2015年8月21日

印刷後はヤバイ…校正で誤字脱字の誤植を見つける7つの方法

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印刷の誤字脱字発見どうしてますか?

印刷業界において、担当者の誰もが一度はやったことがある失敗……、それは誤字脱字などの誤植の発見ミスです。

Webであれば事後修正も可能ですが(そのせいか新聞社のような大手メディアでも誤字脱字を多く見かけます)、印刷物の場合はそうもいきません。

担当者レベルでは発見できなくても、最終的に発見できるフィルタを何重にも作っておけば最悪の事態は免れます。

ただやはり、自分が担当している案件であれば、自分で発見して会社に余計な心配や迷惑は掛けたくない、というのが心情です。

誤植管理の方法は印刷会社やデザイン会社によって違いますが、繰り返し何度も確認を行うルールを作っておくだけで、誰もが効率的に誤字脱字を発見できるようになります。

とは言え、ある程度の慣れが必要なことも確かです。

そこで今回は、ベテラン校正スタッフも心得る誤字脱字をしっかりと発見するための7つの方法をお伝えしたいと思います。

誤字脱字の種類は3つに分かれる

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誤字脱字の種類は大きくわけて3つに分類されます。それぞれ気をつけるべき点が変わるので、しっかり押さえておきましょう。

誤字脱字の種類1.語彙のミス

一般的に誤字と呼ばれるのが語彙のミスの1つです。

1.ひらがな・カナの誤字

印刷データは、現在ほとんどがデジタルデータです。つまり、これはタイピングミスが原因の場合が多いでしょう。特に母音に気をつけてタイピングしないとミスが発生します。

2.漢字・送り仮名・英数字などの誤字

漢字で多いものは誤変換です。
例)誤変換→ご返還

送り仮名はテキスト修正時に起こりやすいミスです。
例)送り仮名→送る仮名

英数字で恐ろしいのが商品値段の間違いです。
例)150,000円→150,0005円

3.単語自体の誤字

単語自体が間違っている場合があります。タイプミスはまだ発見しやすいのですが、覚え間違いの場合、確認時に抜け落ちる可能性が高くなります。
例)備忘録→忘備録

もう1つの語彙のミスが脱字です。

4.ひらがな・カナの脱字

誤字同様、タイプミスでそのまま、ということが多いミスです。データ入力者は気持ちが乗っている時ほど抜け落ちてしまいますし、絶対にミスをするわけがない!という単語で脱字が発生します。

5.漢字・送り仮名・英数字などの脱字

これは非常に多いミスです。特に送り仮名は脱字の王様ですね。
例)送り仮名→送仮名

漢字、英数字も同じく多いミスです。そして、こちらも数字の脱字が恐ろしい…。
例)10万円→1万円

誤字脱字の種類2.文法のミス

1.ら抜き言葉

「出れない」「見れない」「食べれない」など。できる、できないを表現する際に、「ら」を抜いて表現してしまうミスです。

2.下さい、ください

漢字を使う場合は、「醤油を下さい」という実質動詞(「くれ」の尊敬・丁寧表現)になるため、「下さい」と漢字書きにします。

仮名書きにする場合は、「醤油を取ってください」という補助動詞(何かをお願いするときや、敬意を表す尊敬・丁寧表現)になるため、「ください」と仮名書きにします。

参考:「下さい」と「ください」の使い分け(広報Q&A):日本広報協会

誤字脱字の種類3.文章作法のミス

文章作法のミスは知っているかどうかですね。日本語は時代によって使い方が変わります。そのため大きく気に留めない方もいますが、知っているなら作法は守ったほうが綺麗な文章になります。

・改行をしたら次の行は、一文字空白を入れて書く。
・三点リーダ(…)とダッシュ(―)は二文字分を使って書く。例)そんなに……。→そんなに…。

などです。ただし、印刷物とWEBの文章作法は違います(Webの場合は媒体によっても違うので、事前に確認しておきましょう)。

誤字脱字の抜け漏れミスをなくす校正の心得

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誤字脱字チェックは真剣に気合を入れて行う作業ですが、単純に気合が入っているだけで精度が良くなるわけではありません。

まずは、校正をしっかり行うための心得を覚えておきましょう。

校正の心得1.時間をもったいないと思うな

校正作業はミスを探すために行う作業です。特に印刷においては、校正でミスが探し出せないと、何千枚、何万枚もの無駄な印刷にしてしまいかねません。

納期厳守の印刷物だった場合、業務に支障をきたし、大きな損害が出る可能性もあります。

校正の心得2.必ず間違いがあると思え

校正に回ってきた原稿は、まだ未完成のものです。そのため、「必ず間違いがある」という思いでミスを見つけなければいけません。

仮に、担当の校正ではなくても、必ずミスを見つけ出す気持ちで見なければ誤字脱字を発見することはできないでしょう。

校正の心得3.誤字脱字の抜け漏れミスは厳しく追求しろ

誤字脱字は組織全体でなくさなければいけません。そのため、誤字脱字を発見したらデザイナーにはしっかりとミスを伝えなければいけませんし、他の担当者のミスを発見したら、その担当者に苦言を呈さなければいけません。

かかわった方全てがミスをなくす意識を持たなければ、いつか大きな失敗につながります。

効率の良い校正の種類

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しっかりと3つの心得を持った上で校正に臨むわけですが、校正には種類があります。作業手順において、いくつかの校正を行うために作業ルールを作っておきましょう。

校正の種類1.素読み

校正に回された原稿を使って読み込む方法です。誤字脱字チェック、文章表現チェックを主に行います。校正の回数にもよりますが、校正毎に必ず行った方が良いでしょう。

校正の種類2.突き合わせ

元原稿とデザインされた原稿を一字ずつ突き合わせて校正を行う方法です。前校正の直しが入った原稿であれば、前校正前の原稿と突き合わせを行います。

ボリュームが多ければかなり時間のかかる作業になりますが、ここで全てのミスをなくしておくつもりで校正作業に臨みます。

校正の種類3.読み合わせ

1人が原稿を読み上げ、もう1人がチェックをすることで、2人で最終チェックを行います。心配な場合は2度、3度繰り返したり、3人でトリプルチェックを行うこともあります。

誤字脱字を発見する方法とコツ

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次は、具体的に誤字脱字を発見する方法やコツを見ていきましょう。

全て絶対的な方法ではありません。経験と慣れが必要です。発見方法自体をルーチンワークにできるまで、しっかりとルール化しましょう。

誤字脱字発見方法1.文字は単語で見ない

人間の脳は知っている言葉を補完して読むという、ある意味素晴らしい仕組みを持っています。

ところが、この仕組は誤字脱字を発見しなければいけないシチュエーションでは邪魔になります。たとえば、以下の文章を何も考えずにサーッと読んでみてください。

こんちには みさなん おんげき ですか? わしたは げんき です。
この ぶんょしう は いりぎす の ケブンッリジ だがいく の けゅきんう の けっか
にんんげ は もじ を にしんき する とき その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば
じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という けゅきんう に もづいとて
わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。
どでうす? ちんゃと よゃちめう でしょ?
ちんゃと よためら はのんう よしろく

めちゃくちゃなことが書いてあるにもかかわらず、私たちは意味が通じる文章に置き換えて読むことができます。これは私たちが文章を単語単語で読んでいることをあらわしているのです。

校正を行う際は、このような脳内補完が起こらないように、文章を単語毎に読むのではなく一文字一文字しっかりと間違いがないか確認しながら読まなければいけません。

誤字脱字発見方法2.数字に焦点を絞る

印刷の誤植で一番影響が大きいものは数字の誤字脱字です。もし、値段や個数などが間違って印刷されてしまい、顧客の手元に届いてしまったら……、恐ろしい……。

特に気をつけなければいけないのは、商品の料金の場合は、0(ゼロ)です。桁が多くても、少なくても、大問題になります。

また、日付と曜日です。大抵はどちらかが合っていて、どちらかが間違っているのですが、人を集めたいイベント日程をお知らせする印刷物であれば大きな問題になります。

誤字脱字発見方法3.漢字の送り仮名に焦点を絞る

漢字の送り仮名も、非常に間違やすい箇所です。しかも、脳内補完も起りやすいため、意識をしないとさらっと流てしまいます。

というわけで、↑この文章には3箇所の送り仮名の間違いがあります。読んでいて3箇所全て気づいたでしょうか。

送り仮名のミスが起こるのは、タイピングミスか修正ミスのどちらかです。「おっと、間違えた」と修正をした時に、ついでにミスもしてしまい、残ってしまいます。

誤字脱字発見方法4.拡大コピーをする

校正の際、もしも文字が小さい場合は、拡大コピーをしてミスを探すようにしましょう。単純な方法ですがミスを発見しやすくなります。

誤字脱字発見方法5.文節を区切って読む

ペン入れをする場合は、文節を区切って読めるように線を書いても良いでしょう。脳内補完をしてしまうミスを防ぐことができます。

誤字脱字発見方法6.黙読ではなく音読する

こちらも簡単ですが、一語一語をしっかり読む意識があればかなりミスを発見することができます。

誤字脱字発見方法7.複数人でチェックする

人によって、送り仮名を見ることや漢字を見ることなど、誤字脱字チェック箇所の得意・不得意があります。

また、担当者だから気付ける箇所、デザイナーだから気付ける箇所など、立場によって見る部分が違うこともあるため、複数人でのチェックは必須です。

誤字脱字発見方法おまけ.音読ソフトを使う

音声読み上げソフトを使えば、誤字脱字はそのまま読んでくれるのでミスを発見しやすいという意見もありますが、個人的にはおすすめしません。

なぜなら、人間による音読と機械による音読は抑揚が違いすぎるためです。時間もかかる上に、何度も聞かないと抑揚による差がわかりにくく、効率の良い方法とは思えません。

校正で誤字脱字を見つける方法まとめ

誤字脱字はない方が良いに決まっています。文章表現でも、誤認されてしまう文章であれば問題ですし、数字の間違いはもってのほかです。

ただし、誤解を恐れずに言うと、全ての文章において誤字脱字や文章表現の間違いをなくすことは不可能でしょう。

余程の国語能力がある方でない限り、ヒューマンエラーを潰しきることは難しく、そのような専門的なチェッカーを常時置き続けることはどの企業にとっても難しいはずです。

たとえば、「全然大丈夫」という表現がありますが、これは本来、全然の後に否定が来なければいけません。つまり、「全然問題ない」という表現が正しい訳です。

と思っている人が多いはずです。

明治から昭和戦前にかけて、「全然」は否定にも肯定にも用いられてきたはずですが、日本語の誤用を扱った書籍などでは「全然+肯定」を定番の間違いとして取り上げています。国語辞典で「後に打ち消しや否定的表現を伴って」などと説明されていることが影響しているのか、必ず否定を伴うべき語であるようなイメージが根強くあるようです。

参考:なぜ広まった? 「『全然いい』は誤用」という迷信  :日本経済新聞

このように、全然の使い方は時代によっても変わるようで、最近では国語辞典にも、全然を肯定表現で使うという変化も出てきています。

全てを正しく表現するために、さまざまな用語や漢字を知っていれば良いだけでなく、日本語の歴史や現在の捉え方まで押さえておかなければならないのだとすれば、これは相当な労力を必要とします。

誤字脱字チェックは常識の範囲で行うのが妥当だということでしょう。とは言え、ミスが看過されるわけではありません。業務に支障をきたさない程度のチェックは必要です。

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