2016年1月18日
商品展開に必要なテストマーケティングのメリット
目次 ▼
この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。
商品の広域展開に必要な手段とは
あなたは新商品を企画します。
社内の支持も高く、市場調査でも強いニーズが明確に分かり、さらに、多くの時間とコストを重ねて改良し、全国展開の予算も確保しました。
「これは売れる!」
そう確信し、自信を持って世に送り出した新商品が、まったく売れず、さんざんな結果に……。
いったい何がいけなかったのでしょうか?
もちろん商売は水物ですが、事前準備をしっかり行い、様々なリスクヘッジを行うことで、成功の確率を上げることができます。
「でも、内部支持も高かったし、一番重要な市場調査のニーズが高いってわかってるんだけど……?」
例え誰かの支持を得ようとも、市場調査でニーズが高いとわかっても、その商品が売れるとは限りません。
これは、想像の域を超えていないためです。売れる要素が不足、または売れない要素が蛇足しているからかもしれません。
売れる要素を推測することは必要なのですが、「これが売れるんじゃないだろうか?」というプラスの思考に傾いている可能性があります。
これを確証バイアスと呼びます。
確証バイアス(かくしょうバイアス、英: Confirmation bias)とは、認知心理学や社会心理学における用語で、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと。認知バイアスの一種。また、その結果として稀な事象の起こる確率を過大評価しがちであることも知られている。
そこで必要な行為が「テストマーケティング」です。
テストマーケティングとは
テストマーケティングとは、商品を全国展開で販売する前に、限定した市場(地域)や流通チャネルで、小量で複数のパターンを作って販売し、消費者の評価を収集するマーケティング手法です。
既存の商品でも言えることですが、特に、新商品を広範囲に展開する場合は、思い込みを排除して、順序立てた施策を実行しなければいけません。
いきなりの大量生産や販路を広げることは、大きな投資が必要ですし、リスクも大きいものです。
そんなリスクを回避するために、全国的、または大ロットの販売展開の前に用いられているのがテストマーケティングです。
企画・開発・生産・販売、どのフェーズにおいても、PDCAを回すことは重要ですが、テストマーケティングを行えば小規模なPDCAを回すことができます。
テストマーケティングを行いつつ、市場調査はもちろん、初動やリピート率、広告や販促活動の効果を測定します。
そして全国展開するにあたっては、テストマーケティングの結果を元に、商品の仕様や販売・生産計画、販促活動や広告の内容なども追加・修正していきます。
テストマーケティングのメリット
テストマーケティングは、限定地域での販売、少数生産などの特徴から以下のようなメリットを挙げることができます。
メリット1.販売リスクの最小化
テストマーケティングの一番のメリットは、販売リスクを最小化できることです。
例えば印刷物の場合、オンデマンド印刷で100部×4パターンなどを作り、CVR(コンバージョン率)を達成しているかどうかを計測します。CVRの結果を元にロットを変えるので、販売リスクを最小化できます。
メリット2.明確なターゲットがわかる
テストマーケティングは、思い込みによるターゲットの間違いを修正してくれます。
ターゲットの間違いは、事業失敗につながります。販売チャネルや市場ニーズ、広告の反応率など、テストマーケティングの実データを元に、客観的にターゲットを明確にします。
メリット3.複数同時プロモーションが可能
テストマーケティングを用いることで、小規模複数パターンの商品展開を行うため、複数のプロモーションを展開できます。
もちろん複数プロモーションを同時に展開するため、準備にコストはかかりますが、1つのプロモーションに予算を集中させないことで、マーケティングの法則を見つけるまでが最短になります。
テストマーケティングの事例
では、具体的に私たちが行ったテストマーケティングの事例をご紹介しましょう。
ある総合小売店から、「PB(プライベートブランド)を立ち上げ、新しいノートを販売するから、ノート制作を依頼したい。」と相談がありました。
その総合小売店としては新しい試みだったため、商品開発会議から私たちも参加し、ノート制作にあたってのアドバイス、出荷・在庫管理までを一気通貫で対応することになりました。
しかし、いきなり大規模な生産や販売展開はリスクが伴います。
そこで、初年度は色とサイズを変えた6種類のノートを各数百部程度生産し、全国の小売店に対し、小ロットのテストマーケティングを行いました。
テストマーケティングの結果を元に、購入率の高い商品種類や価格帯、流通チャネル、広告や販促活動の効果を検証し、販売に最適な情報を取得しました。
翌年、テストマーケティングの結果から売れ筋商品の分析を進め、改良を加えた4種類の商品を新たに制作し、全国の小売店に特設スペースを設け、各10,000部の販売に踏み切ることができました。
もしもテストマーケティングを行わなければ、ターゲットや商品ニーズが明確ではないまま全国展開を進めることになり、ゼロサムのリスクを抱えながら、プロジェクトを進めることになっていたでしょう。
テストマーケティングのまとめ
ものが溢れている現在、既存商品の多くがコモディティ化してきています。
そのため、今後、より多くの新商品や既存商品の改良品が、市場に出てくることが考えられます。そして、それらは必ず市場拡大を念頭に、進められるはずです。
もちろん、「売れるかどうかは蓋を開けてみないと分からない」にせよ、コストをかけたマーケティングは行わなければいけません。
そして、市場拡大を念頭においているならば、テストマーケティングを一番重要視しなければいけません。
実検証を経て誕生した商品は、顧客にとって、より魅力的な商品になります。
単なる思い込み、確証バイアスを捨てて、より効率的な生産計画、販売計画につなげられるようにしていきましょう。