2025年10月17日

広告で使ってはいけない表現とは? 景品表示法・誇大広告・おとり広告の注意点を解説

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広告は、商品やサービスの魅力を伝えるうえで欠かせない手段です。Web広告をはじめ、Webサイトやチラシなど、広報・PRの場面では、「より多くの人に魅力を伝えたい」と、ついインパクトのある表現を使いたくなるものです。

しかし、実際よりも優れているように見せたり、消費者に誤解を与えるような表現は「景品表示法」に違反するおそれがあります。違反した場合、行政処分や罰金、社会的信用の損失など、企業にとって大きなリスクを招く可能性もあります。

そこで今回は、広告で避けるべき表現や、注意すべきポイントをわかりやすく解説します。

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景品表示法とは?

景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)とは、一般消費者の利益を守ることを目的とした法律です。消費者庁が管轄し、消費者が正しい情報をもとに商品・サービスを選択できるよう、事業者による過大な宣伝や過剰な景品提供などを規制しています。

景品表示法では、主に以下の2つの行為が規制されています。

・不当表示の禁止
・景品類の制限および禁止

「不当表示の禁止」とは、商品やサービスの品質・内容・価格などを、実際よりも優れている、または有利であるように見せかける表示を禁止するものです。

一方、「景品類の制限および禁止」とは、販売促進を目的として提供する景品の金額や内容を過剰にしないよう制限するものです。

参考:事例でわかる景品表示法-消費者庁

景品表示法で禁止されている主な表示

景品表示法では、次の3つの表示が禁止されています。それぞれの定義と具体例を見ていきましょう。

優良誤認表示

優良誤認表示とは、実際よりも商品やサービスの品質・性能が優れていると誤解させる表示です。

「虚偽表示」や「誇大広告」とも呼ばれ、客観的な根拠がないまま優良性を強調すると、優良誤認表示に該当するおそれがあります。

(例)
・「3秒に1個売れている商品」(実際の販売データなし)
・「100%天然素材使用」(一部に合成成分を含む)
・「医療機関も推奨」(実際の推薦実績なし)
・「たった一週間で効果を実感」(科学的根拠・臨床試験なし)

裏付けのない「すごさ」を強調する表現には特に注意が必要です。このような表現を使用する場合は、必ず客観的な根拠を明示するようにしましょう。

有利誤認表示

有利誤認表示とは、実際よりも価格・条件が有利であるように見せかける表示です。

(例)
・「数量限定」(実際には十分な在庫がある)
・「先着100名様限定」(実際には人数制限なし)
・「初回無料キャンペーン中!」(条件付きで料金が発生する)
・「メーカー希望価格の半額」(実際にはメーカー希望価格は設定されていない)

また、「販売価格」とそれより高い「比較対照価格」を併記する「二重価格」は、割引率やお得感を強調する手法としてよく使われますが、比較する価格に十分な根拠がない場合、有利誤認表示に該当するおそれがあります。

(例)
・「通常価格10,000円 → 今だけ5,000円」(常に5,000円で販売されている)
・「前回販売価格6,000円 → 特別価格3,000円」(別商品の価格と比較している)

その他の誤認を招く表示

優良誤認表示や有利誤認表示に該当しない場合でも、次の6つの表示については、消費者に誤認を与えないよう個別に表示が定められています。

・無果汁の清涼飲料水等についての表示
・商品の原産国に関する不当な表示
・消費者信用の融資費用に関する不当な表示
・不動産のおとり広告に関する表示
・おとり広告に関する表示
・有料老人ホームに関する不当な表示

「おとり広告」とは、実際には販売できない商品であるにもかかわらず、購入できるかのように見せかけることを指します。例えば、「該当商品がすぐに売り切れてしまったが、そのまま広告を配信し続けた」といったケースもおとり広告に該当するおそれがあるため注意が必要です。

補足:関連する不当な表示

広告やPRの方法が多様化するなか、近年では次のような表示も「不当表示」として問題視されています。

ステルスマーケティング(ステマ)

広告であることを隠して商品を宣伝する行為です。2023年10月からステマも景品表示法の対象となり、企業が依頼した宣伝を「広告」と明記しない場合は違反となります。

誤解を招く口コミ・体験談

実際には使用していない人が口コミを書いたり、誇張したレビューを掲載する行為です。特にSNSやオウンドメディアなど、個人の発信を装った宣伝には注意が必要です。

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広告で注意すべき表現

日常的に使われやすい言葉の中にも、法的に注意すべき表現があります。

最上級表現

「No.1」「最高」「最大」「日本一」「業界トップ」などの表現は、明確なデータ・出典を併記しなければ優良誤認にあたるおそれがあります。

比較表現

「他社より安い」「他社より高性能」のように他社と比較して自社の優位性をアピールする場合、比較対象・調査条件を明確にする必要があります。

比較表現を使用する場合は、調査内容や実施期間、調査方法なども併記するようにしましょう。

「激安」「絶対」などの曖昧表現

客観的な基準がないまま「激安」「完璧」「絶対」「永久」などと断言すると誤解を招く可能性があります。事実に基づく表現に置き換える必要があります。

強調表現を使用したいときの注意点

「最高」「完璧」「絶対」などの強調表現は、消費者の印象に残りやすい一方で、根拠がないまま使用すると不当表示に該当するおそれがあります。

では、「こうした表現を使いたいときはどうすればいいの?」「街で見かけるのはなぜ?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

このようにインパクトのある表現を使いたい場合は、「打消し表示」を添えて、客観的な根拠や前提条件を明示することが有効です。打消し表示とは、広告内で誤解や誇大表現を防ぐために、限定条件や補足説明を加えて消費者に正確な情報を伝えるための注意書きのことを指します。

(例)
・「※効果には個人差があります」
・「※写真はイメージです」
・「※〇〇試験によるデータ(当社調べ)」
・「※一部地域では対象外です」

このように、表現の背景や前提条件の補足説明を添えることで、誤認を防ぎ、正確な情報を伝えることができます。

ただし、補足説明を添えればどんな表現でも許されるわけではありません。あくまで事実に基づいた内容であることが前提であり、文字が小さすぎたり、目立たなかったりする場合は不当表示とみなされることもあります。根拠のない誇張や曖昧な表現は避けましょう。

業界独自の広告表示ルール

景品表示法に加えて、各業界では独自の広告表現ルールが定められています。ここでは代表的なものを3つご紹介します。

薬機法(旧:薬事法)

薬機法とは、医薬品・医療機器・化粧品・医薬部外品などの品質や表示を適切に管理する法律です。この法律では、虚偽表示や誇大広告によって消費者が誤認することを防ぐために、効果効能の表示や安全性の表現について厳しく規制されています。

特に、健康食品やサプリメントは医薬品ではないため、「病気が治る」「○○を改善する」といった表現は使用できません。また、薬機法は事業者だけでなく、すべての人が対象となるため注意が必要です。

(例)
・「塗るだけでシミが消える」
・「どんな風邪にも効く」
・「このサプリで病気のリスクを減らす」

健康増進法

健康増進法とは、国民の健康の保持・増進を目的として、食品表示や健康食品の広告に関する規制を定めた法律です。

この法律では、消費者へ著しい誤認を与えるおそれのある表示や著しく事実に相違する表示(虚偽・誇大表示)を禁止しています。科学的な根拠がある場合は条件付きで認められることもありますが、消費者が誤認する表現には注意が必要です。

(例)
・「食べるだけで脂肪を完全燃焼」
・「飲んだ全員が効果を実感」

不動産業界

不動産業界では、景品表示法に加え、「宅地建物取引業法」や「不動産の表示に関する公正競争規約」によって、虚偽・誇大広告が禁止されており、具体的に使用禁止の用語が定められています。

(使用禁止用語の例)
・「完全」「完璧」「絶対」「万全」「完全無欠」「百点満点」「パーフェクト」など、欠陥がまったくないことを意味する表現
・「日本一」「日本初」「業界一」「超」「当社だけ」「他に類を見ない」「抜群」など、競合よりも優位であることを意味する用語
・「特選」「厳選」など、一定の基準により選別されたことを意味する用語
・「完売」など、著しく人気が高く、売行きが良い印象を与える用語

(根拠となる事実を明示する場合、条件付きで使用可能な用語の例)
・「最高」「最高級」「極」「特級」「最上」「随一」など、物件の形質や内容、取引条件について最上級であることを意味する用語
・「買得」「掘出」「土地値」「格安」「投売り」「破格」「激安」「バーゲンセール」「安値」など、価格や賃料について著しく安い印象を与える表現

まとめ

今回は、景品表示法の基本と広告で使ってはいけない表示についてご紹介しました。

広告表現は、消費者に商品の魅力を伝えるうえで重要ですが、誇大表現や根拠のない宣伝は、法律違反になるおそれがあります。

PRの場面では、印象に残るインパクトのある表現を使いたくなるものですが、消費者に誤解を与えないよう、必ず正しい根拠を示すことが重要です。

「知らなかった」では済まされないため、今回の内容を参考にしながら、慎重に広告制作を進めましょう。

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