2020年6月12日

事例に学ぶ、景表法の不当表示とは

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広告には、法律によって禁止されている表現が多くあります。

先日は医薬品や健康食品などの広告表示に該当する「薬機法」「健康増進法」にフォーカスしましたが、それ以外の商品やサービスにも該当するのが景表法(景品表示法)です。

景表法ではうそや大げさな表示などで消費者を騙すような表示を禁止しています。

「売上を上げたい」とは誰もが思うことです。

また消費者はより「良いもの」「安いもの」を選びたいと常に考えています。その選択をサポートするのが、パッケージや広告です。

しかし、嘘はいけません。

では、実際にどのような表示がいけないのでしょうか。

まず 不当表示には「有料誤認表示」「有利誤認表示」「その他誤認されるおそれのある表示」の3つの種類があります。

以前も簡単に取り上げましたが、今回は上記3つの表示について、具体的な事例を元にご紹介したいと思います。

優良誤認表示とは

優良誤認表示とは、 景品表示法第5条第1号 で定められた、商品・サービスの品質、規格その他の内容について、実際のものより著しく優良であるということや、事実に相違して、競合事業者よりも著しく優良であるということを、一般消費者に誤認させるような表示を禁ずるものです。

ここでいう「品質」「規格」「その他の内容」というのは、以下のように定義されます。

  • 品質
    商品に関する成分(原材料や、純度、添加物など)や属性(性能、効果、鮮度など)など。
  • 規格
    国、公的機関、民間団体などが定めた一定の要件を満たすことで自動的に、もしくは認証などを経て表示可能な等級など。
  • その他の内容
    原産地、製造方法、受賞の有無、有効期限など(品質や規格に間接的に影響を及ぼすものも含まれる)。

では、具体的にはどんな事例があったのでしょうか。ご紹介していきます。

事例1 ハイオク表示、実際はレギュラーガソリン

2012年、「ハイオク」と称して販売されていたガソリンの大半が、実際はレギュラーガソリンであったとして茨城県にある給油所が消費者庁から措置命令出された事件です。

参考;消費者庁、「ハイオク」偽装給油所に措置命令

事例2 牛肉の産地偽装

2017年、実際は別の産地である国産牛を有名ブランドである飛騨牛と偽って表示した精肉店が、景表法違反に当たるとして措置命令が出されるという事件がありました。

参考:「飛騨牛」偽装で措置命令 営業禁止処分の精肉店

上記2件はすべてうその表示であり、まさに消費者を騙す行為です。

そもそも広告表示などにおいて品質や規格などをアピールするには、根拠が必要です。

優良誤認表示の疑いがある場合、消費者庁から裏付けとなる根拠を示す資料を求められることがあります。

根拠が認められず、消費者庁が行政指導を行ったのが以下の事例です。

事例3 根拠のない空間除菌グッズ

最近、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりウイルス除去などの効果を謳った商品が大きく売上を伸ばしているようですが、消費者庁がこれらを販売する事業者に対し、景表法違反に該当するとして行政指導を行いました。

参考:携帯型の空間除菌用品の販売事業者5社に対する行政指導について(消費者庁)

効果や効能のアピールは広告表示のキモですが、根拠のない表現は絶対にNGです。

有利誤認表示とは

有利誤認表示とは、第5条第2号で定められた、価格を著しく安くみせかけるなど取引条件を著しく有利にみせかける表示のことです。
また、二重価格の表示も、この有利誤認表示に該当します。

二重価格とは、定価と割引価格などを並べることです。 二重価格の表示は、比較対照価格が架空のものでなく明確な根拠があるものに限ります。
by 信用失墜!誇大、虚偽、二重価格…使っちゃいけない広告禁止用語

では、具体的な事例を見てみましょう。

事例1.中古自動車のローン支払額が事実と異なる表示

2011年、月々1,900円で中古車が買えると謳っておきながら、実際は頭金とボーナス払いが必要であり、その説明が広告などに表示されていなかったことなどから、大手中古自動車販売会社ガリバーインターナショナルが消費者庁から措置命令を受けました。

また当該のローンで購入できる中古自動車は全体の1割未満でした。
参考:株式会社ガリバーインターナショナルに対する景品表示法に基づく措置命令について

事例2. 日本一セールで二重価格

大手ショッピングモール「楽天市場」が2014年に行った楽天日本一セールなどで、通常価格で販売しているにも関わらず、通常価格の表示を2倍以上に釣り上げた上で半額以下のセールと見せかける不当な二重価格表示が指摘され問題になりました。

さらにこれらの価格表示を同社の社員が店舗側に指導していたとのこと。消費者庁からも再発防止を要請される事態となりました。

参考:消費者庁、二重価格表示問題で楽天に再発防止を要請

上記2件とも、報道機関などで多く報じられ、消費者からは大きなイメージダウンとなった事件です。

その他 誤認されるおそれのある表示とは

その他 誤認されるおそれのある表示とは、一般消費者に誤認されるおそれがあるとして内閣総理大臣が指定する不当表示のことで、具体的に以下の6つの表示を指します。
1.無果汁の清涼飲料水等
2.商品の原産国
3.消費者信用の融資費用
4.不動産のおとり広告
5.おとり広告
6.有料老人ホーム

すべての説明は割愛しますが、皆さんの身近な例でいうと、1.無果汁の清涼飲料水等がわかりやすいでしょうか。

例えば、果汁・果肉が5%以下なのに、それを明記せず商品パッケージなどに果実名を用いた商品名をつけたり、パッケージに果実の写真などを使用したりすると不当表示とみなされます。

参考:無果汁の清涼飲料水等についての表示(消費者庁)

これは、商品のパッケージデザインやマーケティングなどにも大きな影響を与えますので、商品開発時点で十分な留意が必要になります。

ちなみに現在巷で大人気のレモンサワー商品の多くも、実際はレモン果汁が5%以下のものが多く、パッケージにはしっかりと果汁◯%と表示されています。コンビニに行ったときにでも注意して見てみてください。

事例に学ぶ、景表法の不当表示とは まとめ

以上、景表法の不当表示についてまとめてみました。広告や印刷にかかわることではありますが、消費者の立場としても大事な法律です。

売り手側のモラルも問われます。

どうやったら売上を挙げられるのか、を考える際に、どの表現がOKなのか、十分チェックしましょう。