2022年12月12日
今印刷業界で注目されている、商業用インクジェット印刷機とは?~オフセット印刷方式との違いも解説~
目次 ▼
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印刷におけるニーズの変化と業界の動向
印刷にはさまざまな種類がありますが、商業印刷として代表的なのは「オフセット印刷」と呼ばれる印刷方法です。
オフセット印刷は大量部数・高品質が特徴で、チラシやパンフレットなどの商業印刷のほとんどは、このオフセット印刷によって行われていました。
しかし、近年のデジタル化やペーパーレス化などによって、商業印刷においても同じものを大量に印刷するビジネスモデルから、個々にあわせた付加価値のあるビジネスモデルに変化しつつあります。
また、オフセット印刷は「版」を必要とするため、その作成や管理にコストがかかることや、オペレーターの確保や育成に時間がかかるという課題もあります。
そうしたニーズの変化や課題などから、版が不要で比較的操作しやすい「デジタル印刷」への移行が進んでおり、中でも注目されているのが「インクジェット印刷」です。
「インクジェット」と聞くと、家庭用プリンターのイメージや専用の紙にしか印刷できないイメージがありますが、近年は従来の課題を克服した商業用のインクジェット印刷機が増えてきており、オフセットに代わる印刷方法としても広く使われ始めています。
では、「オフセット印刷」と「インクジェット印刷」にはどのような違いがあるのでしょうか?
今回はオフセット印刷とインクジェット印刷の違いとそれぞれのメリット・デメリット、商業印刷におけるインクジェット印刷機の進化についてご紹介していきます。
オフセット印刷方式について
オフセット印刷とは、「版」を使用した印刷方法です。
版にインクをつけ、そのインクを一度ブランケットというローラーに転写(オフ)した後、ブランケットを用紙に当てる(セット)ことで印刷を行います。
オフセット印刷の版は、インクを付ける部分は水を弾くように、インクを付けない部分は水を乗せやすいように加工され、版に水が乗せられると、水を乗せやすい加工をした部分にだけ水が付きます。
水と油の反発性を利用して、版に油性インクを付けたときに濡れていない部分にだけインクが付くという仕組みです。
メリット①大量部数の場合はコストを抑えられる
オフセット印刷は一度版を作れば同じものを大量に印刷することが可能です。
版を作る費用はかかりますが、大量部数の場合には1枚あたりのコストを抑えることができます。
メリット②高品質な仕上がり
オフセット印刷では、印刷工程で紙とインクがしっかりと定着されるため、にじむことなく細部まではっきり表現できるというメリットがあります。
また、通常はC(シアン)・M(マゼンタ)・Y(イエロー)・K(ブラック)という4色をかけあわせて印刷しますが、オフセット印刷の場合はこの4色のほかに特色と呼ばれるインクを使用することができます。
特色を使用することで、色の表現の幅も広がり、より再現性の高い印刷が可能になります。
デメリット①少部数の場合はコストがかかる
大量部数の場合はコストを抑えられる一方、少部数の場合には1部あたりのコストが割高になってしまいます。
また、大量部数であってもそれぞれ内容を変えて印刷する場合には、その種類の数だけ版を作る必要があるため、その分コストがかかってしまいます。
少部数や多品種の場合にはオフセット印刷は不向きと言えるでしょう。
デメリット②時間がかかる
先ほどもお伝えしたように、オフセット印刷には版を使うため、版を作るための時間がかかります。
また、インクを乾燥させる時間も必要のため、その分納期に時間がかかってしまうというデメリットがあります。
インクジェット印刷方式について
インクジェット印刷とは、細かい粒子状のインクを紙に直接吹き付けて印刷する方法です。
オフセットのように版を作る必要がなく、家庭用プリンターとしてもよく使われています。
メリット①オフセット印刷に比べて短納期
オフセット印刷のように版を作る必要がないため、製版の工程がカットされ、その分短納期で仕上げることができます。
メリット②高発色で鮮やか
インクジェットは発色性が高く鮮やかな仕上がりが特徴です。
多くインクジェットで使われているインクは、紙の表面に染み込む性質のため、印刷面が滑らかで写真の印刷などに向いています。
デメリット①にじみやすく、用紙が限られる
インクを直接紙に吹き付けるという印刷方法のため、にじみやすく、細かい文字などはぼやけてしまう可能性があります。
また、インクが紙に染み込むという性質上、紙がよれやすく、使える用紙が限られてしまいます。
デメリット②印刷速度が遅い
紙の表面に染み込んだインクを乾燥させる時間が必要なため、他のデジタル印刷よりも印刷速度は遅いです。
乾燥前と乾燥後で色の見え方が変わることがあり、色が安定するまでにも少し時間がかかります。
商業印刷におけるインクジェット印刷機の進化
これらのメリットとデメリットから、インクジェット印刷は家庭用として使うものとされ、商業印刷の大半ではオフセット印刷が用いられてきました。
しかし近年、これらの課題を克服した商業用インクジェット機の開発によって、商業印刷においてもインクジェット印刷機を導入する印刷会社が増えてきています。
にじみにくいインクの使用や印刷スピードの向上、乾燥装置の進歩などの技術によって、課題とされていたにじみや用紙の制限、印刷速度なども克服され、オフセットに迫る高品質でスピーディーな印刷が可能になっています。
インクジェット印刷はオフセット印刷の品質とデジタル印刷の操作性を兼ね備えた、いいとこ取りの印刷方式とも言え、小ロットで多品種のニーズが強まる中、今後の商業印刷の主流になることが予想されます。
まとめ
今回は、オフセットとインクジェットの違いと最新の商業用インクジェットについてご紹介しました。
商業用インクジェットの進化によって、従来のデメリットが克服されオフセットに劣らない高品質な印刷が可能になっています。
環境やニーズの変化によって、今後ますますインクジェット印刷へのシフトが加速するのではないでしょうか。