2015年10月27日
新製品販促に必要なイノベーター理論と対象顧客戦略
目次 ▼
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マーケティングに必須なイノベーター理論とは
あなたは、イノベーター理論という言葉を聞いたことがありますか?
聞き慣れない言葉かもしれませんが、製品のマーケティングを行うためには必須知識です。
イノベーター理論は、以下のグラフで表されます。マズローの5段階欲求くらい非常に有名な図なので、イノベーター理論を知らなくてもこのグラフは見たことがある方はいるはず。
参考:イノベーター理論 | 起業・会社設立ならドリームゲート
イノベーター理論とは、エベレット・M・ロジャースが提唱した、新製品や新サービスが市場に浸透していく際の、市場の普及に関する理論のことです。
イノベーター理論に基づくと、市場は、製品やサービスのユーザー(利用者)になるタイミングの違いで、5つの段階に分かれます。
つまり、人の種類を5つに分けると考えてください。
イノベーター理論の5つの段階を理解しておけば、自社製品の適切な販促手法とタイミングを掴めるようになるはずです。
そこで今回は、イノベーター理論の5つの段階と製品寿命の関連性について、お話したいと思います。
イノベーター理論の分類1.イノベーター
イノベーターとは、これまで市場になかった概念の新製品や新サービスにいち早く反応し、積極的に取得・購買するユーザー層のことです。
製品の目新しさ、革新性を重視するユーザーであるため、製品の有用性や普及度などのベネフィットはほぼ関係ありません。
たとえば、日本では未発売の2007年初代iPhoneを輸入してまで購入した層がイノベーターです。
イノベーターは、市場の約2.5%を占めると言われています。
イノベーター理論の分類2.アーリーアダプター
アーリーアダプターとは、アンテナが高く、常に情報収集しながら、自分にとって有益な製品を積極的に見つけるユーザー層のことです。
イノベーターにはなく、アーリーアダプターにある特徴は、新製品や新サービスが自分や社会にとって有益かどうかの判断力があり、かつ、そのベネフィットを発信する影響力を持っていることです。
つまり、新製品が市場に普及するかどうかは、アーリーアダプターが積極的に利用するかどうかが大きな鍵を握ります。
2008年に発売したiPhone3Gをいち早く手に入れた層は、アーリーアダプターです。その中でも、SNSやブログを通じてレビューを行った方たちは発信力があることになります。
アーリーアダプターは、市場の約13.5%を占めると言われています。
イノベーター理論の分類3.アーリーマジョリティ
アーリーマジョリティとは、新製品や新サービスがアーリーアダプターによってある程度評価され、そのベネフィットが確認された段階で、追従してユーザーになった層のことです。
アーリーアダプターの動向と評価を信じて取得・購買に至るため、いわゆるミーハーな層であるとも言えます。
ただし、アーリーマジョリティに浸透しない限り、製品は一時的なブームにしかならないため、市場の浸透に対する重要な媒介の役目を担います。
iPhoneだけではなく、Androidも登場してどちらが良いかという評価がある程度定まった時点で購入をした方は、アーリーマジョリティです。
アーリーマジョリティは、市場の約34%を占めると言われています。
イノベーター理論の分類4.レイトマジョリティ
レイトマジョリティとは、新製品の取得・購買には慎重で、ある程度周囲がその製品やサービスを使用していない限り、取得・購買しないユーザー層のことです。
レイトマジョリティは、自分で製品の良し悪しを判断することがありません。多くが、誰かに進められたり、必要に迫られない限り取得・購入しないため、この層に広がった製品は市場に浸透しきっていると言えます。
世代間格差もあるため、一概には言えませんが、20代~30代であれば2013年以降、40代であれば2014年以降にスマホを所有した方はレイトマジョリティになるでしょう。
レイトマジョリティは、市場の約34%を占めると言われています。
イノベーター理論の分類5.ラガード
ラガードとは、新製品にほとんど興味がなく、製品が一般化し、誰でも知っているものになった段階で取得・購買することがあるユーザー層のことです。
周囲がどれだけその製品を持っていても影響を受けず、必要がないと判断したものは頑なに取得・購買することはありません。
イノベーションが伝統化するまで採用しないので、伝統主義者とも訳されます。ラガードの中には最後まで不採用を貫く方もいます。
たとえば、2015年時点でスマホ普及率が8割~9割を超える20代~30代で、スマホを一度も所有していない方は、ラガードです。
ラガードは、市場の約16%を占めると言われています。
イノベーター理論と製品ライフサイクルの関係
お気づきの方も多いと思いますが、製品ライフサイクルとイノベーター理論、は考え方がかなり似ています。
製品ライフサイクルには、4つの段階(市場投入前を合わせると5段階)があり、製品売上や利益との関係を以下のグラフで表します。
Product life cycle (Basic) NT – 製品ライフサイクル – Wikipedia
0.製品開発期
1.導入期
2.成長期
3.成熟期
4.衰退期A.製品売上
B.製品利益このように、横軸は製品の市場での時期、縦軸は売上や利益を表します。
製品ライフサイクルにおける製品は、イノベーター理論のユーザー層と対応させると理解しやすくなります。
導入期の対象顧客にあたるのは、イノベーターとアーリーアダプターの一部
成長期の対象顧客にあたるのは、残りのアーリーアダプターとアーリーマジョリティ
成熟期の対象顧客にあたるのは、レイトマジョリティ
衰退期の対象顧客にあたるのは、ラガード
製品ライフサイクルで、段階ごとに取るべきマーケティング施策が異なるように、イノベーター理論におけるユーザー層に対しても、適したセールスプロモーションを行う必要があります。
つまり、上記リンク先で示す製品ライフサイクルに合わせた販促施策を行うことが基本です。
なお、製品ライフサイクルは競合他者との関係を意識している一方、イノベーター理論はあくまでも消費者の傾向分析と分類です。着眼点が異なることに気をつけましょう。
イノベーター理論とキャズムの関係
イノベーター理論を活用する上で、新しい概念の製品が、本当に市場に浸透して根付くのかどうかを見極める要素が必要です。
もう一度冒頭のグラフを見てください。
参考:イノベーター理論 | 起業・会社設立ならドリームゲート
イノベーターとアーリーアダプターを合わせると16%です。この16%のラインをキャズムと言います。日本の場合、2000万人弱が相当します。
マーケティングコンサルタントのジェフリー・A・ムーアは、
「アーリーアダプターとアーリーマジョリテイの間には、大きな溝があり、この溝を越える製品でないと、市場に普及せずに消えてしまうため、アーリーマジョリティに対するマーケティングが非常に重要である」
という「キャズム理論」を説いています。
なぜ溝ができてしまうのか、その原因は顧客セグメントの違いです。
アーリーアダプターはアンテナが高く、他人が持っていない価値観に魅力を感じますが、アーリーマジョリティは、多くのアーリーアダプターが持っていることに魅力を感じます。
つまり、アーリーアダプターは、自分で製品価値を判断できることに対して、アーリーマジョリティは、多くのアーリーアダプターに浸透してなければ、製品価値を判断できないということです。
そこで、キャズムを越えるためには、アーリーアダプターの多くの支持が必要になります。
広告に掛けるコストは、導入期よりも大きく、マス広告を利用したり、電車中吊り広告、駅構内広告、バス広告、タクシー広告、ラッピング広告、野立看板、大型ビジョンなどを効果的に使って、シェア確保を目指します。
また、既存顧客に対しては、DM、カタログ通販、ECサイトなど、簡単にリピートができて、なおかつ利便性の高い販促が重要になります。
イノベーター理論の分類と対象顧客のまとめ
イノベーター理論を理解する必要があるのは、自社製品の顧客がどの層かによって、仕掛けるマーケティング戦略が異なるためです。
たとえば、新製品発売時にイノベーターを狙う場合、技術的な画期性を全面に出し、高価格で販売することによって、プレミア感を出すことは有効な戦略です。
一方で、ある程度普及した製品の場合は、製品の完成度を高めたり、サポートや関連製品を充実させるなど、安心して使える製品環境を整える必要があります。
近年では、SNSによって、友人や知人に影響を与えたり、企業に有益な情報を提供できる環境も増えているため、より仕掛けにレバレッジを効かせやすい状況です。
もちろん、イノベーター理論は、すべてのものに当てはまるわけではありませんが、製品販売の一般的な流れとして覚えておくことで、適切なマーケティング展開の目安になりますし、自社ターゲットを絞る目安にもなります。
自社製品を効率的にプロモーションできるよう、イノベーター理論とキャズム理論、合わせて、製品ライフサイクルをしっかり覚えておきましょう。