2025年2月20日

再生紙?FSC認証紙?それぞれの違いとメリット・デメリットを解説!

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近年、SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まり、企業活動において環境への配慮は欠かせない要素の一つとなっています。

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。

引用:SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

特に紙の使用に関しては、森林資源の保全やCO₂排出量の削減といった観点から「再生紙」や「FSC認証紙」への注目が集まっています。

SDGsへの取り組みが求められる今、持続可能な社会の実現に向けて、これらの環境配慮型の紙の特徴やメリット・デメリットを理解し、適切に選択することが重要です。

この記事では、「再生紙」と「FSC認証紙」について、それぞれの違いやメリット・デメリットについて詳しく解説します。

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再生紙とは?

再生紙とは、新聞や雑誌、段ボールなど、一度使用された紙を再利用して作られた紙のことです。

使用済みの古紙は、各家庭や企業などから回収され、製紙工場に送られます。製紙工場では、温水と薬品で古紙を溶かし、混ざっているごみなどの異物を取り除いた後、インクや塗料を洗剤で除去し、繊維だけを抽出します。その後、漂白や洗浄、脱水を行い、紙の原材料となる「古紙パルプ」が完成します。

古紙パルプ配合率とは?

再生紙に含まれる古紙パルプの割合を「古紙パルプ配合率」といい、古紙パルプ配合率が高いほど、古紙の使用量が多いことを意味します。

古紙パルプ配合率はメーカーや用紙によってさまざまで、「再生紙使用マーク」によって表示されています。古紙パルプ配合率が100%であれば「R100」、古紙パルプ配合率が70%であれば「R70」のように表示されます。

再生紙使用マーク

1%でも古紙を含んでいれば「再生紙」として分類されますが、グリーンマークを使用するためには古紙パルプ配合率40%以上(ただし、トイレットペーパー、ちり紙については100%、新聞用紙、コピー用紙については50%以上)であることが基準として定められています。

再生紙を使用するメリット

1.環境負荷の軽減

再生紙を使用する最大のメリットは、環境負荷の軽減につながるという点です。

通常、新たに紙を製造する際には多くの木材が必要ですが、再生紙を使用することで資源を有効活用でき、新規の木材使用量を抑えることができます。また、いらなくなった古紙を再利用するため、廃棄物の削減にもつながります。

2.SDGsの達成に貢献

近年、多くの企業がSDGsへの取り組みを進めています。再生紙を使用することで、環境に配慮した企業姿勢を示すことができ、企業価値の向上やブランドイメージの強化にもつながります。

再生紙を使用するデメリット

1.品質が劣る

再生紙は古紙を再利用して作られるため、通常の紙と比べるとどうしても品質は劣ってしまいます。

さまざまな種類の紙が混ざっているため、再生紙の色は真っ白ではなく、通常の紙と比べると白色度は約60~70%になります。古紙パルプ配合率が高い再生紙ほど、白色度は低くなり、白色度が低いと印刷時の発色にも影響を及ぼす可能性があります。用途に応じて適切な古紙パルプ配合率を選択することが重要です。

また、再生紙は一度使用された紙をリサイクルしているため、どうしても強度や耐久性が低下してしまう点もデメリットとして挙げられます。

2.価格が高い

再生紙は古紙をリサイクルして作られるため、一見コストが抑えられるように思われがちですが、実際には製造工程に大規模な設備や多くの薬品が必要です。古紙の回収、異物の除去、漂白など、一から紙を作る以上に製造コストがかかるため、通常の紙よりも再生紙のほうが価格が高くなります。

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FSC認証紙とは?

FSC認証紙とは、NPO法人のFSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)の規定に基づき、厳しい基準のもとで適切に管理された森林の木材を使用して作られた紙のことです。

FSC認証の種類

FSC認証には、以下の2種類があります。

・FM(Forest Management)認証:森林の適切な管理を証明する認証
・CoC(Chain of Custody)認証:加工・流通過程の適切な管理を証明する認証

この二つの認証を満たして初めて、FSC認証紙として販売できます。例えば、FM認証を受けた森林から生産された木材であっても、加工・流通の過程でCoC認証を取得していなければFSC認証紙として扱うことはできません。森林から最終製品になるまでの生産、加工、流通に関わるすべての組織がFSC認証を受ける必要があります。

FSCマークの種類

FSC認証を受けた製品には、「FSCマーク」を付けることができます。FSCマークがついている印刷物は、FSC認証紙が使われているということを示しています。

FSCマークには以下の3種類があります。

・FSC100%:FSC認証を受けた森林の木材を100%使用している製品
・FSCミックス:FSCが認めている原材料(FSC100%、FSCミックス、FSCリサイクル、FSC管理木材、回収原材料)を複数組み合わせて使用している製品
・FSCリサイクル:回収原材料を100%使用している製品

FSC認証紙と再生紙の違い

FSC認証紙と再生紙は、環境に配慮した紙という点では共通していますが、それぞれ原材料や特徴が異なります。

再生紙は、一度使われた古紙をリサイクルして作られた紙であるのに対し、FSC認証紙は、生産、加工、流通などの製造過程においてFSC認証を受けた紙であり、必ずしも古紙を含んでいるわけではありません。むしろ、FSC認証紙はバージンパルプ(新たに木材から作られたパルプ)から作られていることが一般的です。

そのため、FSC認証紙は環境に配慮しつつも、再生紙よりも品質が高い紙ということになります。どちらが優れているかは一概には言えませんが、用途に応じてFSC認証紙を選ぶ企業も増えてきています。

再生紙とFSC認証紙の違いをまとめると以下のとおりです 。

再生紙とFSC認証紙の違い

FSC認証紙にデメリットはある?

ここまで、FSC認証紙は品質がよく、かつ環境に配慮した紙であることをお伝えしました。FSC認証紙には多くのメリットがありますが、いくつかの注意点もあります。

1.選べる用紙の銘柄が限られる

FSC認証紙は、通常の紙と比べて銘柄や種類が限られるため、希望する紙質や仕様を選べないケースがあります。ただし、年々FSC認証紙の種類は増加しており、選択肢は広がりつつあります。

2.コストが高くなる場合がある

FSC認証を取得することによるコストがかかるため、銘柄によっては通常の紙に比べて価格が高くなることがあります。

今回は、再生紙とFSC認証紙の違い、それぞれのメリットとデメリットについてご紹介しました。

環境保護への関心が高まる中、再生紙やFSC認証紙のニーズは今後ますます増えていくと考えられます。これらの紙を使用することで、森林保全や環境保護に貢献できるだけでなく、企業としてSDGsに積極的に取り組んでいる姿勢を示すことができます。

また、FSCマークや再生紙使用マークなどの環境ラベルをつけることで、消費者に環境配慮への取り組みをアピールでき、ブランドイメージの向上にもつながります。 再生紙とFSC認証紙には、それぞれにメリットとデメリットがあるため、用途や目的に応じて使い分けることが重要です。ぜひ今後の用紙選びの参考にしてみてください。

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