2023年1月30日
はじめての商標登録!自分でできる3ステップ、登録の決め手は事前調査!
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そもそも商標ってなに?
商標とは、自社の商品・サービスを他社のものと区別するために使用するネーミングやマークなどのことです。
そして、その商標を他人から勝手に利用されないように守る権利のことを商標権と言います。
商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。
〈中略〉事業者が営業努力によって商品やサービスに対する消費者の信用を積み重ねることにより、商標に「信頼がおける」「安心して買える」といったブランドイメージがついていきます。商標は、「もの言わぬセールスマン」と表現されることもあり、商品やサービスの顔として重要な役割を担っています。
このような、商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング」を財産として守るのが「商標権」という知的財産権です。
参照:商標制度の概要 | 経済産業省 特許庁
商標権は知的財産権の一つですが、同じ知的財産権である著作権は、著作物が完成した時点で自動的に権利が発生するのに対し、商標権は特許庁へ出願した者に対して与えられる権利となり、特許庁に登録された時点で権利が発生します。
▼著作権については以下のページで詳しくご紹介しています。
商標の種類
商標は文字や図形、ロゴだけでなく、立体的な形状や音、動きなど、さまざまな種類があります。
文字商標
ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字、数字など文字のみからなる商標です。
「かっぱえびせん」や「プリウス」といった商品名も文字商標に含まれますが、 文字と図形を組み合わせたものや、文字の配置を変えたもの、商品名のロゴなどは文字商標としては認められません。
ロゴ商標
図形のみからなる商標や、図形と文字を合わせた商標などはロゴ商標と呼ばれます。
文字商標と混同しやすいですが、文字商標は文字のみで形成された商標であるのに対し、ロゴ商標は図形や記号などによるデザイン性の高いものを指すことが多いです。
企業名やサービス名だけであれば文字商標、企業ロゴやサービスロゴであればロゴ商標となります。
立体商標
商品そのものの形状やキャラクターの人形など、立体的な形状の商標をいいます。
ペコちゃん人形やカーネル・サンダース像、ヤクルトの容器なども立体商標です。
色彩のみからなる商標
単色もしくは複数の色の組み合わせも商標として登録することができます。
この場合、図形等に色がついたものではなく、輪郭がなくても色彩のみで使用できるものを指します。
例えば、トンボ鉛筆が商標登録している「青、白、黒」という色彩の組み合わせは、図形や輪郭がなくてもMONO消しゴムを表現しているということがわかります。
音商標
平成27年から出願の受付が開始された新しい商標の種類が音商標です。
音楽や音声、自然音などからなる、聴覚によって認識されるものも商標として登録することができます。
テレビCMでよく耳にする、久光製薬や「キレイキレイ」などの会社名や商品名をメロディにのせたサウンドロゴも音商標として登録されています。
登録できない商標
ありふれたものや他社と商品・サービスと区別できないもの、公共機関のマークなどと紛らわしいものなどは商標として登録することができません。
商標登録をする4つのメリット
メリット1.ブランディングにつながる
先ほどもお伝えしたように、商標登録をするには特許庁への申請が必要です。
つまり、商標登録されている商品やサービスは特許庁が認めたものということになるため、社会的な信用を得やすくなります。
「このマークがついている商品なら品質も良いだろう」「この会社なら安心できる」といった社会的な信用を得ることによって、商品やサービスの周知もしやすくなり、結果としてブランディングにもつながります。
メリット2.登録した商標の利用を独占することができる
商標権を取得することによって、その商標が他人によって使われることがなくなるため、独占的に使用することができます。
日本おける商標登録では、先に出願をしたものが権利者となるため、自社が先に出願して登録されれば、後から他社に侵害されることはありません。
一方で、昔から使用している名称や商品名であっても他社が先に出願して登録されると、もうその商標は使えなくなるので注意が必要です。
また、一度商標登録をすれば、10年間は有効となるため、更新手続きをすれば半永久的に商標登録を受けることができます。
メリット3.他者に対して使用停止を求めることができる
自分の登録商標を無断で使用している他人、またはその可能性のあるものに対して、商品に付された商標の削除や、商標刻印に用いられる金型の廃棄など、その使用の停止を求めることが可能になります。
また、登録した商標とまったく同じものだけでなく、似ているものに関しても使用停止を請求することができます。
メリット4.譲渡やライセンス使用も可能
商標権を他人に譲渡したり、他人に商標の利用を許可することも可能です。
商標を他社に売却したり、商標を使用したいという企業に対してライセンス料求めるなど、商標への対価を得ることができます。
商標登録の流れ
商標登録を自分で行う場合の流れを一つずつ見ていきます。
ステップ1.出願前の調査
商標登録において最も重要なのが出願前の調査です。商標が認められるかどうかはこの調査にかかっていると言っても過言ではありません。
調査項目①同様の商標がすでに登録されていないか
まずは登録しようとしている商標と同様のものがすでに登録されていないかを調査します。 他人がすでに同一・類似の商標を登録している場合は、登録を受けることができないだけでなく、無断で使うと商標権の侵害となる可能性もあります。
J-PlatPatというプラットフォームを使えば登録されている商標を検索し、読み方が類似する可能性のある商標や特定の文字を含む商標などをチェックすることができます。
調査項目②登録しようとしている商標に特徴があるか
登録しようとしている商標に特徴があるかどうかも重要なポイントです。
登録の審査を通過するためには、その商標に独自の特徴がなくてはいけません。登録しようとしている商標がすでにありふれたものになっていないか、インターネットなどであらかじめ調べておくといいでしょう。
調査項目③どのような区分で出願するか
区分とは、特許庁によって定められた商品やサービスのカテゴリのことです。出願する区分の数によって、出願費用も変わります。
誤った区分で提出してしまうと、正しく商標権が得られない可能性もあるため、登録しようとしている商標がどの区分に該当するのか事前に確認しておきましょう。
商品・サービスがどの区分に当てはまるのか、以下特許庁のHPから確認することができます。
類似商品・役務審査基準〔国際分類第11-2022版対応〕 | 経済産業省 特許庁
ステップ2.提出書類の作成・出願
調査が完了したら、出願に向けて書類を作成します。
インターネットを用いる方法と書類で出願する方法の2種類があり、出願費用は2022年4月時点で3,400円+(区分数×8,600円)、書類で出願する場合はさらに電子化手数料が必要になります。
出願料 | 3,400円+(区分数×8,600円) |
電子化手数料(書類出願の場合のみ) | 2,400円+(書類の枚数×800円) |
書類で出願する場合
書類で出願する場合は、特許庁の所定の様式をダウンロードし、PCによる入力もしくは印刷後に手書きで記入します。
作成要領については商標登録願書書類の書き方ガイドを参考にしてみてください。
必要事項を記入したら、出願手数料相当額の特許印紙を購入し、指定の箇所に貼り付けます。特許印紙は郵便局や特許庁内でも購入することができます。
願書は受付窓口へ持参するか、もしくは郵送にて提出することができます。
また、前述したように書類で提出した場合は出願後に電子化手数料が必要です。出願日から数週間後に払い込み用紙が送付されるので、2,400円+(書類の枚数×800円)を支払います。
オンラインで出願する場合
電子証明書と出願ソフトを用いてオンラインで出願することも可能です。
【事前準備】
① インターネット出願ソフトをダウンロードしてPCにインストール(Windowsのみ対応)
「電子出願ソフトサポートサイト」よりダウンロード
② 電子証明書(個人の場合はマイナンバーカードも利用可能)を用意
③ 電子証明書がICカードタイプの場合はICカードリーダを必要
必要なものが用意できたら書類を作成します。「さくっと書類作成」を使うと願書の作成がスムーズです。
願書が完成したら出願ソフトから特許庁へ送信して提出完了です。
【インターネット出願のメリット】
① 紙出願の場合に必要となる電子化手数料が不要
② 書類の電子化による審査の遅れがない
③ 書式の自動チェック機能付き
④ 手数料の支払いにクレジットカードが使用可能
⑤ 特許庁からの通知をオンラインで受け取ることが可能
⑥ 出願時の書類以外の提出もオンラインで可能
ステップ3.商標の登録手続き
審査に合格した場合には、特許庁から「登録査定」という書類が送られてきます。30日以内に「登録料」を特許庁に納付することで、はじめて正式に商標登録となります。
登録料 | 区分数×32,900円 |
商標権の権利期間は10年ごとに更新する必要があります。10年後に更新する可能性がある場合は 、更新料の納付期限を忘れないよう「特許( 登 録 )料支払期限通知サービス」を利用するといいでしょう。
【補足】拒否理由通知がきた場合
登録できない理由が発見された場合、「拒絶理由通知書」が送付され、拒絶理由が通知されます。ただし、この通知は不合格が確定したということではありません。
「意見書」という書面で反論することもできますし、出願内容を変更することで再審査を受けることもできます。書類のサンプルが特許庁のHPに掲載されていますのでご確認ください。
詳細は特許庁HP内にある「初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~」のページに掲載されています。そちらもぜひ参考にしてみてください。
まとめ
今回は、商標とは何か、自分でできる商標登録の流れについてご紹介いたしました。
調査や願書の作成など、商標登録には手間やコストもかかりますが、その分得られるメリットも大きいです。
自分で出願するのが難しい場合は、専門業者や弁理士に依頼する方法もあります。その分依頼する費用もかかりますが、登録したい商標の内容やリソースなどをふまえて、最適な方法を検討してみてください。