2015年12月18日
デザイナーを続けるために必要な感性以外の3つの能力
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デザインは感性で作るもの?
あなたはデザイナーと聞いてどのようなイメージが浮かぶでしょうか。
私達の業界では、印刷やパッケージデザインを担当するDTPデザイナーやWEBサイトデザインを担当するWEBデザイナーが一般的です。
WEBデザイナー
UI/UXデザイナー
DTPデザイナー(DTPオペレーター)
グラフィックデザイナー
CGデザイナー
デザイナーにはあまりにもたくさんの種類があるので、続きは上記リンク先をご参考に。
さて、一般的に、デザイナーはデザインをすることがお仕事で、マーケティング知識なんか必要ないと思っている方が多くいます。
つまり、感性でデザインをし、「かっこいい!」「かわいい!」と思われれば良い、アーティスティックな職業というイメージを持っている方がいるということです。
そのため、デザイナーに偏った憧れを抱いて、デザイナー志望する方が毎年後を絶ちません。
最初に趣旨を言ってしまうと、「感性でデザイン作って良いのは、デザイナー1万人に1人のみ!(もののたとえ)」だということ。
むしろ、各業界のトップデザイナーは、マーケティング知識をしっかり持っていますし、デザインのイロハが身についている人たちしか存在しません。
では、デザイナーがデザインをするために必要な知識や考え方とは一体どのようなものでしょうか。
デザイナーに必要な要素1.インプットする能力
仕事ができる人はみな、素晴らしいアウトプットをする方たちです。
デザイナーであればデザインというアウトプットをしますし、素晴らしい提案をしてくれる営業マン、優れたアイデアを出す経営者、話の引き出しが多い接客業など、アウトプットで人を惹きつけることができるのは仕事ができる証です。
なぜ素晴らしいアウトプットができるかというと、圧倒的なインプットがあるためです。
何もないゼロからアウトプットは生まれません。創造するためには基になる知識をどんどんインプットしなければいけません。
ありきたりの日常の光景に疑問をもち、そこに意味のある問題を発見するためには、できるだけ多くの知識のアーカイブが必要です。それもできれば経験的な知識が多ければ多いほどよい。
勘違い人が多いように思いますが、知識があるから疑問をもつことができるのです。知識はわかるために必要なのではなく、わからないことを発見するために必要なのです。
インプットをし続けることは能力です。上記引用のように、知識を持ち、疑問が生まれ、また知識に変えていくという積極的な姿勢が不可欠です。
デザイナーに必要な要素2.STP分析を行う能力
多くの優秀なデザイナーは、顧客との対話の中で、STP分析を行っています。
STP分析は以前ご紹介しましたが、「STP分析?」と思った方も、実は対話の中で、日常的に行っている行為かもしれません。
STP分析とは、「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」の頭文字をとったマーケティング手法のことです。
STP分析を使うことで、市場のニーズを満たす自社商品やサービスの位置付けを把握でき、効果的に市場を開拓することができます。
上記の事例で使った未来の自動車のデザインを行うとしましょう。
未来の自動車は、1人乗りの超コンパクト設計で、全長180cm、全幅が70cmほどしかありません。
ところが、ボタン1つで前後左右ワイドに拡大し、前列2人乗り+後列2人乗り兼荷物置き場が確保できます。価格も新車で60万円、燃費もリッター50kmで、現在の自動車に比べると維持費もスペースも必要ありません。
未来の自動車が持つコンセプトを全て把握し、現在の自動車に乗る方たちを様々なセグメントによって分解していきます。
デザインで商品の良さを伝えるためには、メリットが可視化されてなければいけません。
ターゲットに、「自分が使ったらとても便利で、メリットが高い!」と思わせるためには、商品を使っているシチュエーションをそのままデザインに落とし込んで、イメージせさせることが必要です。
明確なターゲットが決まったら、商品の特徴を軸に、ポジショニングを行い、以下のコンセプトが決定します。
都内に住む世帯年収が高めの家庭で、平日に買い物に行く主婦をターゲットにした未来の自動車は、自転車よりも楽に移動ができ、原付きよりも安全で、軽自動車ほど維持費やスペースを必要としない乗り物です。
STP分析から考えられるデザイン要素
さて、これらのSTPを分析すると、宣伝や販促を行う際、この未来の自動車は、一般家庭に対する利便性、安全性、費用対効果の高さを打ち出したデザインが必要になることがわかります。
上記例では、少し若めの主婦が買い物に行くために、颯爽と未来の自動車に乗っているところでしょうか(イメージが貧弱でごめんなさい)。
どのようなデザインも明確なコンセプトが必要ですが、初めからコンセプトが決まった商品はありません。このコンセプトを洗い出すためのSTP分析を行う能力が必要です。
デザイナーに必要な要素3.デザインに根拠を持たせる能力
DTPデザイナーには、色の使い方、構図、文章などの基礎知識が必須です。これらを抜きにしてデザインはできません。
例えば、冬服用のパンフレットを作る場合は、ポイントで暖色を活用して、暖かいイメージを持ってもらうようにします。
重要な建物の写真を使う場合は、地平線を中央に持ってきて建物と地面に分ける二分割配置を行った方が、全体が綺麗に見え、写真に安定感が出ます。
フォントは、明朝体とゴシック体を混ぜて使わず、なるべく同一のフォントで太さが異なるフォント(フォントファミリー)で表現するほうが統一感がでます。
ただし、デザインによっては、この基本知識をわざと崩すことがあります。
冬服用のパンフレットを作りたいのに、寒色を多用する場合は、クールでハイセンスを売りにした青基調のラインナップを提供するからかもしれません。
重厚な建物を強調するポスターなのに、二分割配置を行わない場合は、建物を接写することで、浮かび上がる特徴を持っているからかもしれません。
デザインを安定させて文章を読ませたいのに、明朝体とゴシック体を混ぜて使う場合は、読ませたい文章が不安を煽るための文章かもしれません。
このように1つ1つのデザインに対して、「基本を重視する場合」、「基本から外れる場合」には根拠があり、これら根拠の集合体がデザインを作っているのです。
感性以外でデザイナーに必要な3つの能力まとめ
今回は、多くのデザイナーがわかっているお話を敢えて文章化してみました。
というのも、デザイナーが「ただかっこ良いデザインを作る職業」だと、よく誤解されるためです。もちろん、一部のデザイナーも誤解をしていることがあります。
そしてこれらの誤解が、「デザインはかっこ良いんだけど、なぜか結果に繋がらないんだよなぁ。」というパターンに嵌ってしまい、改善点が見えにくい原因になります。
何より、デザイナー自身が作ったデザインの根拠を理解して、アウトプットできなければ、再現性がないため、二度と同じデザインはできないことになってしまいます。
そのため、面倒で時間がかかっても、デザインの基礎知識を習得したり、マーケティングの勉強をコツコツと身に付けることが大切なのです。
なお、このような考え方は、デザインに限った話ではありません。私たちは、販促を行う上でマーケティングをとても重視しています。
そして、様々なフレームワークを使うことで、体系化し、より再現性が高い方法を日々模索し続けています。
もちろん、マーケティングのプロフェッショナルであっても、全ての販促を成功に導くことは不可能だと思いますが、知識と経験を積み重ねていけば、成功の再現性は高くできるはずです。
デザイナーに限らず、感性が必要ないということではありませんが、感性のみで仕事をして良い方たちは、非常に限られています。
私たち一般人は常に能力を磨き続けて勝負し続けていかなくてはいけません。