2024年8月28日
UDフォントとは?特徴と普通のフォントとの違いを解説
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UD(ユニバーサルデザイン)とは
UD(Universal Design)とは、年齢、性別、国籍、文化、言語などに関係なく、誰にとってもわかりやすく、使いやすいデザイン設計のことを指します。名前が示すとおり、“Universal”は「普遍的」や「万人向け」を意味します。
「バリアフリー」という言葉と混同されがちですが、バリアフリーは、障害を持つ方や高齢者、病気や怪我をしている方々などが直面する障壁(バリア)を取り除く(フリー)ことに焦点を当てています。一方、ユニバーサルデザインは、初めから誰にでも使いやすいデザインを目指すものです。つまり、ユニバーサルデザインは事前にすべての人にとって使いやすい設計を行い、バリアフリーは後から障壁を取り除くアプローチであると言えます。
このユニバーサルデザインは、1985年にアメリカのノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターのロナルド・メイスによって提唱され、以下7つの原則がガイドラインとして設定されています。
1.誰もが公平に使えること
2.利用時の自由度が高く柔軟であること
3.使い方が簡単でわかりやすいこと
4.必要な情報がすぐにわかり、明確であること
5.危険につながらないこと
6.身体的な負担が少ないこと
7.使いやすいサイズと空間が設計されていること
ユニバーサルデザインには、公共施設や製品などの「モノ」に適用されるものと、看板や案内表示などの「情報」に適用されるものがありますが、今回は情報のユニバーサルデザインの一つである、UDフォントについてご紹介いたします。
UDフォントとは
UDフォントとは、ユニバーサルデザインのコンセプトに基づいて作成された、誰にとっても読みやすく、わかりやすいフォントのことです。読みやすさを向上し、読み間違いを防ぐために、以下のようなさまざまな工夫が施されています。
シンプルな画線
一般的なフォントの場合、特に明朝体では、「はね」や「はらい」などの画線や筆の動きが表現されており、これが上品さを生む反面、線がつながって見えたり、視認性が損なわれてしまうことがあります。
UDフォントは、こうした複雑な画線を取り除き、文字の形をシンプルにすることで、見やすさを向上させています。
また、通常の明朝体は横線が細いのが特徴ですが、UDフォントの明朝体は横線が太めにデザインされ、読みやすいように工夫されています。
濁点と半濁点の判別
「ブ」と「プ」、「ぼ」と「ぽ」など、濁点と半濁点は文字のサイズによっては判別しにくく、誤読しやすい文字です。
UDフォントでは、濁点や半濁点が文字と重ならないようスペースが十分に取られており、文字同士が区別しやすくなっています。
文字の差別化
小文字の「l」(エル)と大文字の「I」(アイ)なども混同しやすく識別が難しい文字と言えますが、これらもUDフォントではそれぞれの文字の違いがわかりやすいようにデザインされています。
文字のアキを広く取る
UDフォントは、一般的なフォントに比べて文字のアキが広めに設定されているのも特徴です。
例えば、文字のアキが狭いと、「3」や「6」が「8」に見えたり、「C」と「O」が混同するケースもありますが、UDフォントではそういった誤読を防ぐために、アキが広めに設計されています。
このように、UDフォントには
・視認性(文字の認識のしやすさ)
・判読性(他の文字との判別のしやすさ、誤読の少なさ)
・可読性(文章全体の読みやすさ)
を向上させるためのさまざまな工夫が施されています。
文章全体として比較した場合でも、UDフォントは文字がはっきりと認識しやすく、文字量が多くても読みやすさが保たれていることがわかります。
おすすめのUDフォント
ここからは、特におすすめしたいUDフォントをご紹介します。
イワタUDフォント
イワタUDフォントは、フォントメーカーのイワタとPanasonicが2006年に共同開発した、世界初のUDフォントです。このフォントは「視認性」「判読性」「デザイン性」「可読性」を高いレベルで兼ね備えており、リモコンなどの小さなボタンでもつぶれることなく、読みやすさが保たれるのが特徴です。すべてのPanasonic製品の機能表示に採用されています。
モリサワUD書体
モリサワUD書体は、「文字のかたちがわかりやすいこと」「文章が読みやすいこと」「読み間違えにくいこと」をコンセプトに、フォントメーカーのモリサワが開発したUDフォントです。読みやすさを重視しながらも、文字そのものの美しさが損なわれることのないようにデザインされています。
参考:UD書体 | モリサワのフォント | 株式会社モリサワ
ヒラギノUD書体
ヒラギノUD書体は、ヒラギノフォントのデザインを踏襲しつつ、長時間読んでも目が疲れにくい柔らかな形状が特徴です。漢字と仮名の字面をほぼ一定にそろえたヒラギノUD角ゴFや、液晶ディスプレイでも見やすいように横線やはらいを太くしたヒラギノUD明朝など、さまざまなバリエーションがあります。
BIZ UDフォント
多くのUDフォントは有料で提供されていますが、BIZ UDフォントは無料で利用できる点が特徴です。Windows 10以降のPCには標準でインストールされており、Macでも「MORISAWA BIZ+」や「Google Fonts」から無料でダウンロードすることが可能です。BIZ UDゴシックとBIZ UD明朝の2種類が用意されています。
まとめ
今回は、UDフォントの特徴とおすすめのUDフォントについてご紹介しました。
UDフォントは、正確な情報を幅広い人々に届けるために効果的なフォントです。チラシやパンフレットなどの紙媒体をはじめ、WebサイトやSNSといったデジタル媒体、さらには看板や案内表示、電化製品など、さまざまなシーンで活用されています。
目的や用途、ターゲットに応じて、ぜひUDフォントを取り入れてみてください。