2020年6月2日
「薬機法」や「健康増進法的」とは?コロナ禍における広告表現の注意点
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広告表現において、もっとも気をつけなければならない法律といえば、景表法と薬機法、健康増進法の3つが挙げられるでしょう。
景表法とは誇大広告や虚偽広告などの不当表示を禁じたり、景品類の限度額などを定めたりする法律です。
参考:信用失墜!誇大、虚偽、二重価格…使っちゃいけない広告禁止用語
また薬機法は、正式名を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。この法律では、医薬品や医療機器だけでなく、医薬部外品や化粧品等においても、効能や効果、性能に関する虚偽や誇大表示を禁じています。
2014年に薬事法から薬機法に名称が代わり、更には2020年の秋には新たな改正薬機法が施行される予定です。(虚偽・誇大広告違反に対して課徴金制度が導入されます。)
そしてもうひとつが健康増進法です。メインは国民の健康維持や現代病予防目的に関する法律ですが、健康食品における誇大広告を禁じています。
3つとも、罰則を受けるだけでなく、企業側に対する社会的な信用も失いかねない大事な法律です。
また、場合によっては消費者の健康被害を招く場合もあります。
もちろん、その対象はチラシやパンフレットなどの印刷物も例外ではありません。
インターネットであればすぐに削除も可能ですが、印刷物の場合はそういうわけにいきませんので、慎重な対応が必要です。
コロナ禍における広告表現の注意点とは
新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴い、旅行業界や飲食業界など経営が窮地に陥る業界もある一方、長引く外出自粛生活による巣篭もり消費と言われる消費トレンドも生まれました。
またマスクやアルコール消毒液などは相変わらず品薄が続いており、今現在においても衛生用品への需要は継続中です。
新たな商機を掴むべく、様々な対策を考えている経営者も多いと思います。
しかし、ここで注意しなければならないのが、先に上げた景表法や薬機法、健康増進法です。
というのも、実際に「コロナに効く」「新型コロナウイルス対策」を謳ったサプリメントを宣伝した企業が書類送検や家宅捜査になっているからです。
送検容疑は2月3~28日、厚生労働相の承認を受けていないのに、インターネット上で「新型コロナウイルス対策」「(ウイルスの)増殖を抑制する」などと宣伝。3月16日に販売目的で175本のサプリ入りの瓶を社内に貯蔵した疑い。
捜査関係者によると、この薬局は医薬品として承認を受けていないタンポポ茶を販売する際、「新型コロナウイルスに対する予防効果がある」とチラシで宣伝した疑いが持たれている。
未承認医薬品を広告することや、根拠もなく明確な効果を謳うことは禁止されています。
また消費者庁からは、新型コロナウィルス感染症の予防効果を謳う商品の表示について以下のような注意喚起が行われています。
新型コロナウイルスについては、その性状特性が必ずしも明らかではなく、かつ、
民間施設における試験等の実施も不可能な現状において、新型コロナウイルスに対
する予防効果を標ぼうするウイルス予防商品については、現段階においては客観性
及び合理性を欠くものであると考えられ、一般消費者の商品選択に著しく誤認を与
えるものとして、景品表示法(優良誤認表示)及び健康増進法(食品の虚偽・誇大
表示)の規定に違反するおそれが高いものと考えられます。
by 新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品の表示に関する改善要請等及び一般消費者への注意喚起について(PDF)
健康増進法に違反する誇大表示とは
医薬品から健康食品まで、虚偽や誇大表示などは禁止されています。
では実際にどのような表現がNGなのでしょうか。
健康食品には大きく分けて、保険機能食品とそれ以外の保険食品という2つの種類があります。
保険機能食品とは、特定保健用食品や機能性表示食品、栄養機能食品に該当する食品を指します。
ここでは健康食品(保健機能食品以外の健康食品)を例にしてご紹介したいと思います。
医師又は歯科医師の診断、治療等によることなく疾病を治癒できるかのような表示
医師による新案・治療が必要な疾患について、医師 による診断・治療等によらなくとも、疾病が治癒するものと誤認するおそれがある表示です。
例えば、「薬に頼らずとも高血圧を改善」「これを飲めば医者いらずで生活習慣病を改善」のような表現です。
このような表現は、診療を要する疾患等を抱える人が適切な治療機会を逃す可能性があります。
健康食品を摂取するだけで、特段の運動や食事制限をすることなく、 短期間で容易に著しい痩身効果が得られるかのような表示
わかりやすい例でいえば「食べるだけで痩せる」的な表現ですね。
食事制限や運動が必要であるにも関わらず、 容易に痩せられるかのような効果を謳うことは虚偽誇大表示に当たる恐れがあります。
最上級又はこれに類する表現を用いている場合
わかりやすい例でいうと「最高級」、「最高レベル」、「日本一」、「ベスト」などを用いた表現です。
健康状態や生活習慣などにより、健康保持促進は人それぞれであって、最高の効果を発揮することは立証できません。また「誰でも簡単に」「絶対」などの表現もどのような場合でも効果があると認識させるためNGです。どちらも客観的な立証が不可能です。
体験談の使用方法が不適切な表示
実際に商品を摂取した人の体験談、健康食品の広告にはよくあります。
しかし実際には、体験者が存在しないにもかかわらず、体験者の存在をねつ造したり、体験者のコメントをねつ造する場合は、虚偽誇大表示に該当します。
また、ネガティブな体験談があるにも関わらず都合のよいコメントのみを引用したり、誰でも容易に効果が期待できるような表示もNGです。
体験結果やグラフの使用方法が不適切な表示
広告や容器包装等において、試験結果やグラフを不適切に使用することです。
例えば、トリミングなどにより実際の試験結果等よりも過大な効果があるかのように表示したり、複数の試験結果のうち有意差のある大きい試験結果のみを使用し表示することが該当します。
行政機関等の認証等に関する不適切な表示
厚労省や消費者庁などの行政機関(外国機関含む)や研究機関等による認証、推奨等を取得し表示していても、それらの認証が実際には制度の趣旨とは異なるなどの表示をしていた場合が該当します。
例えば「 米国食品医薬品局 (FDA )認可」 と謳ったダイエット食品があったとしても、FDAによる安全性は担保されていますが必ずしもダイエット食品としての有効性が認められたとは限りません。( FDAは成分が法的に問題なければ登録できるものです)
認可自体は虚偽ではないですが、 消費者にとってこのような表示がダイエットに効能があるかのように誤認させる場合は虚偽過大表示等に該当するおそれがあります。
価格等の取引条件について誤認させる表示
効果に関して誤認させるものや健康増進法上の虚偽誇大表示ではなく、これは景表法上の違反です。価格等の取引条件について、競合事業者よりも有利であると誤認される表示は景表法上の不当表示に該当します。
「通常価格○○円のところ初回限定のお客様に限り△△円でご提供」と表示している商品が実際には○○円で販売されていない場合などが該当します。
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これらの表示は、虚偽でなければ問題ありません。
しかし消費者庁がこれらの表示に対し裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を求めた場合、ただちに提出しなければなりません。 またその資料に合意的な根拠が認められない場合は、同庁から指導や勧告を受けることとなります。
健康増進法(誇大表示の禁止)については、まだまだ細かい取り決めがあります。
詳しい内容は、消費者庁のウェブサイトを確認してください。
まとめ
薬機法や健康増進法に関連する商品の広告は実にセンシティブです。チラシ1枚であっても気が抜けません。
消費者にインパクトを与えるためについ直接的な表現を使いたくなるのはわかりますが、そこは一歩冷静になって問題がないかどうか確認してください。
実際に医薬部外品やヘルスケア用品など、直接的な表現は禁止されているものが多く、多くのコピーライターが代替表現をもって対応しています。
わたしたちも実際にある健康食品のLP(ランディングページ)を手掛けた際に 「良くなります」はNG、「はたらきを助けます」はOKのようなことで頭を悩ませました。
薬機法に詳しい専門家に頼むのが確実でしょう。