2015年7月30日
製品ライフサイクルとは?製品事例と最適な販促手法
目次 ▼
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製品ライフサイクル(プロダクトライフサイクル)とは
私たちが取り扱う商品やサービスには、製品ライフサイクルと呼ばれるマーケティングの流れがあります。これは、製品が生まれ市場に投入されてから衰退していくまでの流れを表す考え方です。
製品ライフサイクルには、4つの段階(市場投入前を合わせると5段階)があり、製品売上や利益との関係を以下のグラフで表します。
Product life cycle (Basic) NT – 製品ライフサイクル – Wikipedia
0.製品開発期
1.導入期
2.成長期
3.成熟期
4.衰退期A.製品売上
B.製品利益このように、横軸は製品の市場での時期、縦軸は売上や利益を表します。
「何だか難しいこと言い始めたぞ…」と考えているあなた、大丈夫です。難しくありません。
製品によってライフサイクルの長さは異なりますが、世の中のほとんどのものがこの製品ライフサイクルの流れに沿って、成長、成熟して行き、最後に衰退します。
そして、この「ライフサイクルの時期によって、企業の販促方法が変わってくる」ということが今回のテーマです。
それでは、製品ライフサイクルの各時期の製品状態と適した販促方法に関するお話をしていきましょう。
製品ライフサイクル0.製品開発期
製品開発期とは、製品ライフサイクルに入る前の段階で、企業が製品開発を行う時期のことを言います。
製品開発期はもちろん売上はゼロ、利益がゼロどころか、製品開発に関する投資を行っている時期であり、コストが膨らんでいる状態です。
製品開発期の製品事例
単なる研究ではなく目的を持って製品開発されているわかりやすい事例としては、新薬開発が挙げられます。
新薬は製品開発期が非常に長くコストも掛かりますが、明確なソリューション目的で開発されているため、市場に出ると一気に導入から成長に繋がる製品です。
製品ライフサイクル1.導入期
導入期とは、開発された製品が市場に投入され始めた時期のことを言います。
導入期の概要
導入期は製品の認知度が低く、市場の需要も低い段階です。ただし、その需要の低さはポテンシャル自体が低いのか、それとも認知が低いためなのかを見極める必要があります。
また、今後その製品を市場で伸ばしていくために市場との対話を行い、製品コンセプト、機能拡充、使い方などをまとめて、製品が持つイメージを固めていかなければいけません。
導入期の製品傾向
導入期では製品の機能そのものがシンプルでなければいけません。わかりやすくシンプルな機能に価値を持ってもらえなければ、市場に受け入れられないでしょう。
導入から次の成長に繋げるためには時間がかかり、売上が伸び悩みます。この段階では売上が少なく流通や販売促進に費用が多くかかるため、他のフェーズに比べて利益はマイナスになるか、あってもわずかです。
流通業者に関心を持ってもらったり、消費者に知ってもらったりするために費用が多くなります。
導入期の製品事例
今であれば産業用のロボットのように役に立たない、対話型ロボットのようにしゃべらない、そんな癒やし系のロボットが導入期の製品事例になるでしょう。
例えばロボット開発スタートアップGROOVE Xが開発したAI搭載ロボット「LOVOT」もそんな癒やし系ロボットのひとつ。2体59万円という高価格にも関わらず2018年の初回発売時には3時間で完売するという人気ぶり。
まさに成長段階に入ろうとしているように思えます。
導入期の販促
導入期の販促は、認知度を高めることと製品に対する市場の反響を確かめることが一番の目的です。
認知度を高める販促手段としては、新聞折込、フリーペーパー折込、チラシ街頭手渡し、フリーペーパー広告、タウン誌広告、専門雑誌広告などを市場規模に合わせて投入すると良いでしょう。
また、市場の反響を確かめるためにサンプリング、モニタリングを行い、ニーズの把握に努めましょう。
製品ライフサイクル2.成長期
成長期とは、製品が市場で広く認知、購入され、売上と利益が成長する時期のことを言います。
成長期の概要
成長期は製品需要が喚起されニーズが高まりますが、ライバルとなる参入業者も増える時期です。また、流通経路が増え、供給量も増えるため、生産ライン整備にコストをかけなければいけません。
成長期に入った製品は放っておいても市場が拡大していくため、シェアの確保が一番の課題になります。
成長期の製品傾向
新しい市場参入業者が増える中で、企業ブランドの確立、製品の新機能やサービスの拡充など、独自性を出すための製品を加えていく時期でもあります。
製品の独自性を出すための手段として、低価格化モデルの作成、新たな製品特徴の追加、セグメントによる独自市場の開拓、ファン・上顧客の開拓という対策を取り、徐々に企業のポジショニングを決めていきます。
成長期の製品事例
忙しい共働きの主婦を筆頭にいまもっとも売れている時短家電といえば、ほったらかし調理家電です。ブームの先駆けとなったSHARPのホットクックを始め今やさまざまなメーカーからあやゆるほったらかし家電が発売されています。
主婦のみならず独身にも需要が広まっており、今後あらゆるバリエーションの後発商品が発売されていくものと思われます。
成長期の販促
成長期の販促は、新規開拓とともにリピーターや上顧客の育成が必要になります。
広告に掛けるコストは導入期よりも大きく、マス広告を利用したり、電車中吊り広告、駅構内広告、バス広告、タクシー広告、ラッピング広告、野立看板、大型ビジョンなどを効果的に使ってシェア確保を目指します。
また、既存顧客に対してはDM、カタログ通販、ECサイトなど、簡単にリピートができてなおかつ利便性の高い販促が重要になります。
製品ライフサイクル3.成熟期
成熟期とは、未開拓の市場が少なくなり、市場の拡大が見込めなくなってきた時期のことを言います。
競争が加熱して利益が圧迫される場合と、新たな投資が不要となるため安定的な利益が確保できる場合の2パターンが予想されるでしょう。
成熟期の概要
成熟期は各企業のマーケットシェアが安定し、これ以上ライバルが参入できない状況が生み出されます。つまり、ある程度売上と利益が安定し、予算規模が計算で出せる状態です。
企業は成長期で獲得したシェアを失わないために、ポジショニングとブランディングイメージを強化しなければいけません。
成熟期の製品傾向
成熟期における製品は、機能差やサービス差がほとんど見られなくなってきます。また、その製品を使ったポジショニングも少しずつ埋まってくるため、工夫が難しくなってきます。
成熟期の製品の多くは成長期と比べると需給バランスが逆転し、生産過多に陥ります。そのため、企業として製品の今後の扱い方を考えなければいけません。
具体的には、製品の市場を変える、製品特性を別物にするといった行為が必要です。
成熟期の製品事例
20代30代の保有率が90%を超えたスマートフォンはまさに成熟期を迎えつつあります。
機能や使い方なども認知され、いまや子供からお年寄りまで普及しつつあります。
機能や連携サービスも充実し一人一人の生活に欠かせなくなったとも言えるスマートフォンですが、5Gサービスの開始を控え、ネットワーク環境の拡充とともにさらなる発展を続けていくこととなるでしょう。
スマートフォンに変わるデバイスは今すぐ出てくることはないでしょうが、性能面における差別化が難しくなりメーカー間の競争が激化することが予想されます。
成熟期の販促
成熟期の販促は、製品寿命を伸ばすための販促手段や、ライバルを研究して安定した売上と利益があるうちにパイの争奪戦となる激しい販促活動を行います。
積極的な割引施策や増量キャンペーン、クーポンを使った広告施策など、顧客維持を目的とした積極的な販促が効果的です。
製品ライフサイクル4.衰退期
衰退期とはその製品に代わる製品が市場に登場することで、売上、利益ともに減少していく時期のことを言います。
衰退期の概要
製品の市場ニーズが低下するとともに、売上、利益、競争相手ともに衰退が見え始め、経営的には市場撤退も視野に入れる必要が出てきます。
企業は新規開拓を完全にストップし、既存顧客のメンテナンスや最低限の保守対応がメインになってきます。
衰退期の製品傾向
これ以上製品の改良やサービスの拡充を行う必要はないため、投資コストは必要ありません。
ただしその製品が今後どれだけ市場で必要とされているかを見極め、どれ位の期間維持を続けるのか、または市場から撤退するかを考えます。
衰退期の製品事例
衰退と言うには少し早いかもしれませんが、スマートフォンの台頭によりパソコンは今後確実に衰退期に入っていく製品でしょう。
日本ではパソコンを使ったことがない、使えない若者も増えていると聞きます。
パソコンの価格下落は大きくなり、出荷台数も減少し始めてきています。
個人需要が減る一方、法人需要は堅調であり、簡単になくなってしまう製品ではありませんが、この製品での売上、利益は今後期待できなくなっていきます。
衰退期の販促
企業は衰退期にある製品に代わるものを市場に提供することで、徐々に製品の移行を印象付け、撤退による失敗イメージというリスクを回避しなければいけません。
新しい製品の展開方法はこれまで培ってきた販促活動と同じです。衰退期の製品に販促を行う必要はありませんが、築き上げたブランドイメージをどうやって新しい製品に引き継げるかを考えます。
製品ライフサイクルと時期にあわせた販促方法まとめ
製品ライフサイクルと4つの時期、(製品開発期)、導入期、成長期、成熟期、衰退期の詳細説明、また、それに合わせた販促方法をご紹介しました。
この話は一見これまで市場になかった新しい概念の製品に対してのみ適用されそうなイメージですが、そうではありません。
たとえば、沖縄に出店するジンギスカンの店でも良いですし、アメリカに進出する日本のマンガ雑誌でも良いです。
仮に新しい製品ではなくても、場所によってはそれまでなかった概念として製品ライフサイクルの考え方を用いた販促を行えるでしょう。
製品ライフサイクルの考え方は、マーケティングの世界では極めて一般的な考え方です。ぜひ覚えて自社製品の今後の広告や販促のために活かしてみてください。
さて、冒頭の製品ライフサイクルのグラフを見て、他のマーケティングを思い浮かべた方もいるはずです。それはイノベーター理論のグラフではないでしょうか。
製品ライフサイクルが商品を対象にするならば、イノベーター理論は市場を対象にしています。この2つにはしっかりと関係性が存在しますので、興味がある方は以下を参考にしてみてください。