2015年12月17日

トレンドに乗りたい!流行りを分析するPEST分析とは

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PEST分析とはトレンドに乗るための分析

マーケティングには、様々なフレームワークがあります。有名なものでは3C分析、SWOT分析など、これまで販促伝説でもいろいろとフレームワークの解説をしてきました。

参考:
市場、競合、自社の関係性と3C分析の実行方法
強み弱みを把握するSWOT分析とは?分析方法と事例

良いマーケティングに必要なことは分析力です。現在の自社や商品が置かれている市場環境、他社の動向など、様々な要素が絡み合って商売は行われています。

その様々な要素をどうすれば売上に繋げられるのか、を考えることがマーケティングです。

ところが、様々な要素の中で、自分たちではどうにもならない要素もあります。それが、外的要因(外部環境)です。

外的要因には、市場動向、技術革新、法律、文化の変化などが含まれます。外的要因は独力では変えようがないため、その環境でいかに行動するかを考えていくことになります。

参考:
強み弱みを把握するSWOT分析とは?分析方法と事例

では、どうにもならない外的要因は無視するしかないのかというと、そうではありません。どうにもならないからこそ、時流を掴み、タイミングを見極め、将来を予測しなければいけないのです。

この外的要因を分析するためのマーケティング手法が、今回のテーマである「PEST分析」です。PEST分析は、3C分析やSWOT分析を行ううえでも欠かせません。

もし難しく聞こえるなら、こう考えてください。PEST分析は「トレンドに乗るための分析だ」と。それでは、PEST分析について、詳しくお話していきます。

PEST分析の構成要素

外的要因には、「マクロ環境」と「ミクロ環境」があります。

マクロ環境とは社会全体の動向や状況のことで、ミクロ環境とは当該市場の状況やその市場での競合他社の状況などです。

まず、ミクロ環境の分析にはファイブフォース分析を使います。ファイブフォース分析は、3C分析において、競合企業や市場などの状況を分析するために使われています。

ミクロ分析は、業界の競争環境の激しさを知り、利益確保の可能性を把握する目的で行われます。

具体的には、「買い手の交渉力」「供給企業の交渉力」「新規参入業者」「代替品の脅威」「競争関係」の5の要因について、それらの変化が市場にどう影響するかを分析します。

参考:
市場、競合、自社の関係性と3C分析の実行方法

マクロ環境は事業に与える影響が大きく、その範囲は膨大なので、無駄無く効率的に調査する必要があります。そこでPEST分析を使います。

PEST分析には、マクロ環境の変化を具体的に洗い出すために、以下の4つのチェックリストがあります。

・政治的(Politics)
・経済的(Economy)
・社会的(society)
・技術的(Technology)

それでは、4つの視点それぞれでどのような分析を行うのか、そしてその意味を見ていきましょう。

PEST分析の政治的(Politics)影響

政治や法律面から、現在の市場環境を分析します。法律や税制などは国や地方自治体の決定事項であり、一企業が変えられるものではありません。しかし、企業活動には大きく影響します。

【政治的要因】

・法律、法改正
・税制
・政治、政権交代
・政治団体、デモ  など

企業は法律や税制の改正動向に注目し、新しい法律が施行された場合の自社への影響を予め想定しておく必要があります。

例えば、消費税の引き上げです。すべての企業にとって等しい環境変化ですが、この変化が業績に良い影響を与える企業と悪い影響を与える企業に分かれます。

一般的には、消費税が上がる前に駆け込み需要が起き、消費税が実施されてからは、消費意欲が冷え込むと言われています。また、生活商材の需要は多少落ち込みますが、贅沢品などの需要は大きく落ち込みます。

つまり、原価が高く、売値が高い商材を扱っている商売ほど、悪い影響が大きくなるということです。反対に、生活商材に近く、積極的なコスト削減策を成功できた企業は市場を大きく獲得できる可能性があります。

環境が変化した時の自社に対するインパクトがどれくらいのものになるのか、予め調査・分析して対策を練ることで悪影響を減らすことはできます。更には環境変化を売上げ向上に繋げることも可能になります。

PEST分析の経済的(Economy)影響

経済分野の分析では、経済成長率や個人消費の動向、株価や金利、為替市場の推移などの分析を行います。政治的な影響とは違い、突発的に発生することもあり、より予想がつきづらいものです。

【経済的要因】
・契機動向
・経済成長率
・物価
・為替・株価・金利
・消費動向  など

市場の国際化によって、世界の経済状況を踏まえた方策が必要になってきました。為替相場の上下は、すべての企業に直接的・関節的影響があります。

例えば、自動車に欠かせないガソリンは、主に為替価格の変動により高騰します。ガソリン価格の高騰は中小の自動車貨物運送業では、倒産に至るほどインパクトが大きいものです。

ガソリン価格が高騰した場合、自動車貨物運送業が生き残るためには、燃料費高騰の影響を吸収できるだけの剰余金の見通しを立て、運送以外の業務への展開や、他社との価格以外の差別化を図るなどの対策が考えられます。

常に変動し、影響を与える経済指標の動向をチェックし、事前に対応策を講じることで、経済変動のリスクを最小限に抑えたり、ビジネスチャンスを掴むことができます。

PEST分析の社会的(society)影響

人が生活する上で、環境の変化は必ず起こります。その社会環境や消費者のライフスタイルの変化などを分析します。

【社会的要因】
・人口、人口構成
・流行、世論
・宗教、教育
・高齢化、少子化 など

社会的要因はどのように活用できるのでしょうか。

例えば、昭和30~40年台に比べて、夫婦共働きが一般的になってきた結果、食事の準備に時間をかけられなくなりました。その社会的背景があったため、食品産業は手軽に調理できるレトルトパックを拡充して売上げを向上させました。

また、少子高齢化によりシルバー世代が増えることは誰でも知っているため、その世代に対する何らかのビジネスができないだろうか?と考えたことがある方は多いはずです。

反対に、子供向けのビジネスを展開している企業にとっては、先を見据えた業務展開を準備しておく必要があると予測できます。

PEST分析の技術的(Technology)影響

最後は技術の変化によってどのような影響があるかを分析します。

【技術的要因】
・インフラ
・IT
・イノベーション
・新技術など

技術は常に進化し、ビジネスを大きく変え続けています。今主流の技術がいつまでも主流なわけではありません。

例えば、携帯電話が普及したせいで、公衆電話はなくりましたし、固定電話も衰退しています。ビデオテープはDVDに代わり、インターネットのおかげで、今後記録メディアも必要なくなるでしょう。

インターネットは、広告手法も変えましたし、マーケティング手法も変えました。また、物流やオフラインでの商売構造そのものも変えようとしています。

商売をしている方は、必ずインターネットを意識しているはずです。この考え方は20年前にはあり得ませんでした。

PEST分析の利用方法

PEST分析は、政治的、経済的、社会的、技術的な外的環境を客観的に分析し、自社や自社商品にどのような影響があるかを考えるためのフレームワークです。

そのため、まずは4つの視点で今何が起こっているのか、どういう状況なのかを以下の画像のように書き出し、可視化していきます。

ITmediaに掲載されていた人材派遣業のPEST分析例です。

PEST分析

参考:
4文字英語で最強フレームワーク:経済や社会の変化が何をもたらすか――PEST分析 – ITmedia エンタープライズ

書きだした要素は、自社にとっての外的要因として捉え、1つずつ影響を精査していきます。

そこで1つ付け加えて欲しい要素は「時間軸」です。書きだした要素に対して、

・現在はどうであるのか
・過去はどうだったのか
・未来にどうなるのか

という分析要素を付け加えることで、なるべく思惑を排除した客観的な将来の事業戦略を分析できるようになります。

流行りを分析するPEST分析まとめ

商品には必ず製品ライフサイクルがあります。そして、商品が定着する市場には必ずイノベーター理論があります。

参考:
製品ライフサイクルとは?製品事例と最適な販促手法
新製品販促に必要なイノベーター理論と対象顧客戦略

その中で、さらに商売を行う企業の波が存在します。この波を作る要素の1つが外的要因の政治的、経済的、社会的、技術的要素なのです。

これらの外的要因を正しく把握することで、現状を分析し、将来のリスク回避ができるだけでなく、時流に則った新しい戦略の基礎にもなりえます。

いくら現在技術力があり、競合他社に勝るマーケティングを行っていても、規制緩和によってライバルが増えたり、税制改正によって利益が圧迫されたり、流行が長く続かないと予想できたり、技術の発展によって価値がなくなってしまう恐れがある商品にしがみついていては、商売を続けていくことはできません。

そこで私たちは、現状から将来を予測するためにPEST分析を用いて、マーケティングに活用しなければいけないのです。

PEST分析は、商売の基本の1つです。正しく使って、長く続く商売を行うために活かしてみてください。