2015年7月15日
ユニバーサルデザインとは?身近な事例と解説
目次 ▼
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ユニバーサルデザインとは
ユニバーサルデザインという言葉をご存じですか?
ユニバーサルデザインとは、年齢、性別、障害や能力の差、また国や文化、言語の差を問わず、誰でもわかりやすく、使いやすい物を作るためのデザインのことです。
たとえば、
・視覚障害者のための点字
・車いす利用者や足の不自由な人のためのバリアフリー設計
・言語が違っても表示がわかるピクトグラム(絵文字)
・パソコン画面の音声案内
・左右どちらの手でも使えるハサミ
・シャンプーとリンスの違いが突起で分かる仕組み
・背が低くても使える自動販売機
など、あったら便利だなと思うものから、健康な私たちでは気付きにくい、身体的マイノリティの利便性が追求された「すべての人のためのデザイン」を総称して、ユニバーサルデザインと呼びます。
今回は、このユニバーサルデザインの具体例や原則、また、印刷物におけるユニバーサルデザインがどのようなものなのかを解説したいと思います。
ユニバーサルデザイン7原則とは
ユニバーサルデザインには、ロナルド・メイス氏が提唱した「ユニバーサルデザイン7原則」という考え方があります。この7つの原則に従って、ユニバーサルデザインの多くが設計されています。
まずはこの7原則をご紹介します。
ユニバーサルデザイン原則1.公平性
使う人誰もが、いつでもどこでも、同じように操作できる公平性が必要です。
たとえば、自動ドアは誰でも自動ドアの前に行くだけで使用することができます。子供からお年寄りまで、車いすの方にも使える公平性があります。
ユニバーサルデザイン原則2.自由度
使用にあたって、利用する人の好みや能力に合うように高い自由度が求められます。
たとえば、右ききの人でも左ききの人でも使えるハサミ、高さの違いで複数ボタンが設置された自動販売機やエレベーターなどが考えられます。
ユニバーサルデザイン原則3.直感的
Can(Easy Open Can) – 缶 – Wikipedia
ひと目で使い方が理解できるように、簡単に作られた直感性が求められます。
たとえば、足で踏んで点灯させるライトや開け方が明記してあるプルタブ缶などが考えられます。
ユニバーサルデザイン原則4.明確性
201005東京タワー大展望台のフロア点字 – 東京タワー – Wikipedia
利用する人の視覚、聴覚などの感覚能力に関係なく使い方がわかる明確性が求められます。
たとえば、文字での説明、電光掲示板、点字での説明などが考えられます。
ユニバーサルデザイン原則5.安全性
八戸駅新幹線ホーム – ファイル:八戸駅新幹線ホーム.jpg – Wikipedia
間違った使い方をしてしまっても、危険につながらないよう配慮された安全性が求められます。
たとえば、ロック式の給湯ポットや二重ゲートで事故が起きない考慮がされた新幹線ホームなどが考えられます。
ユニバーサルデザイン原則6.持続的
長時間使っても疲れないデザイン、体への負担が少ない持続性が求められます。
たとえば、Suicaを使って改札を通過できる仕組みや開けやすい歯磨き粉のフタなどが考えられます。
ユニバーサルデザイン原則7.スペース
成城コルティ多目的トイレ – File:成城コルティ多目的トイレ.JPG – Wikimedia Commons
使う人の大きさや動きに関係なく使えるためのスペースが求められます。
たとえば、多目的トイレやコイン投入口が大きい自動販売機などが考えられます。
このように、私たちの身の回りにはユニバーサルデザインが溢れています。
ユニバーサルデザインに関して深く学びたいという方は、沢山の本も出ていますし、以下のような協会もありますのでぜひ参考にしてください。
印刷にもユニバーサルデザインは必須!
ユニバーサルデザインは製品だけではなく存在する商品すべてが対象になる得るため、印刷業界でも対応が進められています。
特に印刷物は、目で見ることが万人に共通した仕様です。
残念ながら視覚障害で完全に目が見えない方への対応は難しいのですが、それ以外の方には使いやすい、見やすいユニバーサルデザインに基づいた印刷物を作る必要があります。
(※ちなみに弊社は点字印刷に対応しています。)
以上を踏まえ、印刷物を目で見ることに対して何らかの不利な特徴を持つ人達をピックアップし、その方々にどうやって対応したユニバーサルデザインにすれば良いかを考えていきましょう。
弱視の方に対する印刷物
弱視の方は、周囲の明るさや印刷物のコントラストによって見え方が異なります。
印刷デザインの注意点
・デザインを崩さないように大きな文字で作成する
・場合によっては拡大版も用意しておく
色弱の方に対する印刷物
色の見え方が一般的な見え方とは異なります。色弱の多くの方が赤~緑の波長域で色の差を感じにくいため「赤緑色盲」と言われ、薄い赤はグレーっぽく、濃い赤が黒に見えるなどの特徴があります。
印刷デザインの注意点
・重要箇所に赤を多用しないようにする
・重要箇所は色以外の別要素でも目を引くようにする
・白黒コピーでも情報を認識できるようにする
高齢者に対する印刷物
高齢者は年を重ねる毎に弱視になっていきます。また同様に、色覚も低下していくため、色弱者同様に気をつける必要があります。
印刷デザインの注意点
・デザインを崩さないように大きな文字で作成する
・場合によっては拡大版も用意しておく
・重要箇所に赤を多用しないようにする
・重要箇所は色以外の別要素でも目を引くようにする
・白黒コピーでも情報を認識できるようにする
・カタカナや英語、略語などをなるべく使わないようにする
子どもに対する印刷物
ある程度の年齢であれば見ることに問題はありませんが、難しい内容を読み取ることはできません。
印刷デザインの注意点
・イラストや写真を多用し、図版率を意図的に上げる
・わかりやすい言葉、内容で表現する
・漢字を使う場合は、必ずひらがなルビをつける
印刷物のユニバーサルデザインまとめ
製品や立体物に比べると、印刷物のユニバーサルデザインは比較的簡単です。
まとめてしまうと、文字が読みやすいか、色が煩雑でなく見やすいか、重要箇所がわかりやすいか、難解な内容ではないか、効果的に写真や図を使用しているかといった、極めて普通のことを守るだけなのです。
この辺りは別でも解説していますので、以下を参考にしてください。
ただし、見やすさ、読みやすさと優れたデザインは、ややもするとトレードオフになる場合もあります。そのためバランスを取ることがなかなか難しいのです。
印刷物のユニバーサルデザインを意識する場合は、誰が対象になるのかをしっかりと見極め、その対象に寄せたデザインを心がける必要があることを認識しておきましょう。