2026年7月24日
中東情勢は印刷費にどう影響する?値上がりの理由とコスト対策を印刷会社が解説
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2026年3月以降、中東情勢の緊迫化を受けて、原油価格や海上輸送への影響が懸念されています。
ニュースでは、「原油価格の上昇」や「物流コストの増加」、「ナフサ不足」といった話題が取り上げられる機会も増え、ガソリン代や石油化学製品をはじめ、さまざまな分野への影響が注目されています。
そして、その影響は紙や印刷業界にも及びます。紙の製造や印刷、輸送には多くのエネルギーや石油由来の資材が使われているため、中東情勢の変化は用紙価格や印刷コストを押し上げる要因の一つとなります。
日本製紙は1日、菓子箱や紙袋などに使われる紙製品を7月21日出荷分から値上げすると発表した。値上げ幅は15%以上。中東情勢を受けて紙の表面のコーティングに使う接着剤などの原材料価格の高騰に対応する。
引用:日本製紙、包装用紙など15%以上値上げ 中東情勢受け7月21日から – 日本経済新聞
石油製品の価格が上がることはイメージしやすい一方で、「なぜ中東情勢が紙や印刷の価格にも影響するのだろう?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
本記事では、中東情勢が印刷物の価格に影響する理由や、印刷物を発注する際に知っておきたいコスト対策について、印刷会社の視点からわかりやすく解説します。

なぜ中東情勢が世界経済に影響するのか?
中東は世界有数の産油地域
中東地域には、サウジアラビアやイラン、イラク、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェートなど、世界有数の産油国が集中しています。
石油は、自動車や航空機の燃料だけでなく、発電や工場設備を動かすためのエネルギー源、さらにはプラスチックや化学製品の原料としても欠かせない資源です。
そのため、中東地域で紛争や地政学的リスクが高まると、石油の供給に対する懸念が高まり、世界中のエネルギー供給や物流など、幅広い分野に影響が及びます。
ホルムズ海峡は世界のエネルギー輸送の要
中東には、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶホルムズ海峡があります。ホルムズ海峡は、世界で海上輸送される原油の約2~3割が通過するとされる重要な航路です。また、日本が輸入する原油の約9割も、この海峡を経由して運ばれています。

そのため、中東情勢の緊迫化によってホルムズ海峡の安全性が脅かされると、原油や液化天然ガス(LNG)の輸送が滞り、世界各国へのエネルギー供給にも大きな影響を及ぼします。
原油価格の上昇はさまざまな業界に影響する
原油価格が上昇すると、ガソリンや軽油などの燃料価格だけでなく、物流費や電気・ガスなどのエネルギーコスト、石油化学製品の価格なども上昇しやすくなります。
こうしたコストの上昇は、製造業や物流業をはじめ、幅広い業界へ波及します。
つまり、中東情勢の変化は、原油価格や物流コストを通じて、世界中の産業や私たちの暮らしに幅広い影響を与えているのです。
中東情勢によって印刷費用が上昇する4つの要因
紙は木材を主原料としているため、「紙そのものが石油から作られている」わけではありません。
では、なぜ中東情勢の変化が印刷物の価格にまで影響するのでしょうか。ここからは、その主な要因を4つご紹介します。
1.製紙工場のエネルギーコストが増えるため
製紙工場では、木材チップを加工したり、紙を乾燥させたりする工程で、大量の電力や蒸気、ボイラー燃料が使用されています。
原油価格が上昇すると、こうしたエネルギーコストも増加します。その結果、製紙にかかるコストが高まり、紙の価格に反映されることがあります。
2.物流コストが上昇するため
紙は、製紙工場から印刷会社、さらには納品先へと、複数の工程を経て何度も輸送されます。原油価格が上昇すると、輸送に必要な燃料費も高くなるため、物流コストが増加し、その分が紙や印刷物の価格へ反映されることがあります。
また、日本では紙の原料や印刷資材、製紙用薬品の一部を海外から輸入しているため、海上運賃の上昇も印刷費を押し上げる要因の一つです。
3.印刷資材には石油由来のものが多いため
印刷工程で使用する資材の中には、石油を原料とする石油化学製品が数多くあります。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
- インキ・トナー
- 接着剤
- ラミネートフィルム
- 樹脂製の包装材
これらの資材価格が上昇すると、印刷全体のコストも増加し、印刷費に大きく影響します。
4.原材料・資材の調達コストが増えるため
中東情勢の悪化は、原油価格だけでなく、国際物流やサプライチェーンにも影響を及ぼすことがあります。
例えば、2023年に紅海周辺の情勢が悪化した際には、一部の船舶がスエズ運河を避けて喜望峰経由へ航路を変更しました。その結果、輸送日数が長期化し、燃料費や海上運賃が上昇しました。

このような物流の混乱は、紙の原料や印刷資材の調達コストを押し上げる要因になり、結果として用紙価格や印刷費の上昇につながる可能性があります。
発注者側ができるコスト対策
用紙価格の変動や原油価格の上昇そのものを、発注者側でコントロールすることはできません。しかし、印刷物の仕様や制作の進め方を工夫することで、価格上昇の影響を軽減できる場合があります。
ここでは、品質とのバランスを保ちながら取り入れやすいコスト対策をご紹介します。
紙の厚さ・銘柄を見直す
用紙の銘柄によっては流通量が少なく、価格や納期に影響する場合があります。 そのため、特定の銘柄にこだわるのではなく、用途に応じて複数の選択肢を持っておくと柔軟に対応しやすくなります。
また、紙の厚みや加工方法を見直すことで、コストを抑えられるケースもあります。
一方で、紙を薄くすると費用は抑えられるものの、手に取ったときの印象や高級感、耐久性などが変わる場合があります。会社案内や記念誌など、品質やブランドイメージが重視される印刷物では、単純に安価な用紙や薄い紙を選ぶことが最適とは限りません。
「情報を正しく伝える」「企業のブランドイメージを伝える」といった印刷物本来の目的を踏まえながら、最適な仕様を検討することが重要です。
モノクロ印刷を検討する
先述のとおり、印刷費は紙だけでなく、インキやトナーなど印刷資材の価格にも左右されます。
そのため、すべてのページをカラーで印刷する必要があるのかを見直し、内容に応じてモノクロ印刷を採用することも、有効なコスト対策の一つです。
ただし、写真の魅力や商品の色味を伝える冊子、デザイン性を重視するパンフレットなどでは、モノクロにすることによって見やすさが損なわれる可能性があります。
「安いから」という理由だけで判断するのではなく、読者に必要な情報を十分に伝えられるかという視点で検討することが重要です。
情報を整理してページ数を適正化する
掲載内容を整理し、本当に必要な情報を取捨選択することで、ページ数を減らせる場合があります。ページ数が少なくなれば使用する紙の量も減るため、印刷コストの削減につながります。
ただし、無理にページ数を減らそうとすると、文字が小さくなったり、情報を詰め込みすぎたりして、かえって読みにくくなってしまうことがあります。
ここでも重要なのは、ページ数を減らすこと自体ではなく、情報を整理し、読者にとってわかりやすい構成にすることです。その結果としてページ数を適正化できれば、品質を維持しながらコストを抑えることができます。

制作が決まったら早めに相談する
紙や印刷資材の価格は、市場動向や供給状況によって日々変動しています。そのため、印刷物の制作が決まったら、できるだけ早い段階で印刷会社へ相談することをおすすめします。
早めに相談することで、価格変動を見据えた仕様の提案や、在庫状況を踏まえた用紙の選定など、選択肢が広がる可能性があります。
印刷会社と相談しながら最適な仕様を検討することで、品質とコストのバランスが取れた印刷物を実現しやすくなるでしょう。
まとめ
中東情勢の緊迫化は、私たちの生活にさまざまな影響を与えており、紙や印刷もその例外ではありません。
しかし、印刷にかかる費用は中東情勢だけで決まるものではなく、世界的な需給バランスや為替、エネルギー価格など、複数の要因によって変動しています。
そのため、印刷物を制作する際は、価格変動を見据えて早めに印刷会社へ相談し、用紙や仕様について幅広い選択肢を検討することが大切です。状況の変化に柔軟に対応することで、コストや納期への影響を抑えながら、目的に合った印刷物を制作しやすくなるでしょう。





