2015年10月20日
一般的な印刷の工程とデジタル印刷の工程の違いとは
目次 ▼
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基本的な印刷工程、デジタル印刷工程の違いとは?
普段作るチラシ、ポスター、パンフレットなどの印刷物は、大きくオフセット印刷(通常一般的な印刷)とオンデマンド印刷(デジタル印刷)の2種類の印刷方式に分かれます。
これまで当サイトでは、何度かオフセット印刷とオンデマンド印刷の違いと、それぞれのメリット、デメリットをお伝えしてきました。
今回は、この2つの印刷方式を印刷工程の違いで比べて見たいと思います。
印刷工程の基本的な流れ
その前に、印刷の基本的な流れを押さえておきましょう。
印刷工程は、プリプレス工程、プレス工程、ポストプレス工程の3つの段階からなります。
今回お話する一般的な印刷とデジタル印刷にもこの3つの工程があります。それぞれの工程で行われる作業は以下の通りです。
1.プリプレス工程
原稿:企画・編集・デザイン
原版作成(組版・版下・製版)
刷版
2.プレス工程
印刷
3.ポストプレス工程
加工(製本や光沢加工)
印刷の基本工程1.プリプレス工程
原稿を元に組版して、印刷原版を作成するまでの工程をプリプレス工程と言います。現在では、プリプレス工程のほとんどをコンピュータで管理しています。
オフセット印刷とオンデマンド印刷の大きな違いは「版」があるか否かです。この「版」をつくる過程がプリプレス工程に含まれます。
オンデマンド印刷とオフセット印刷の違いを簡単に説明すると、印刷の際に「版」を使うのか、使わないのかです。版を使うのがオフセット印刷、版を使わないのがオンデマンド印刷です。
※版なしオフセットもあります
一部例外もありますが、オンデマンド印刷とオフセット印刷の違いは印刷する前に決まっている、ということになります。
オフセット印刷のプリプレス工程
オフセット印刷のプリプレス工程は、従来は写植版下方式の文字組版をベースに行われてきました。
版下が完成したら文字校正に進みます。ここでは文字の間違いや写真の位置など細部まで確認します。誤字・脱字の訂正と共に、ページレイアウト見出しのフォントの大きさなどさまざまな要素も調整します。
校正してページ、面のデータが完全になると、印刷用紙に対応した大きさに付け合わせる面付け処理をして、製版用のデータになります。
少しややこしいかもしれませんが、16ページの場合、2セットの面付けを行っています。数字が逆になっているのは、デザインの天地を現しています。
たとえば、1の横に16がありますが、表紙が1だとすると、裏表紙は必ず16になります。という考え方で、面付けを行うとこのような配置になるのです。
ここで、製版用データを元に色校正を作成する場合もあります。製版工程では、製版用データを出力して印刷機に取り付ける刷版を必要枚数作成します。
オンデマンド印刷のプリプレス工程
基本的なプリプレス工程についてお話ししましたが、現在は汎用型パソコンによる、デジタル方式の文字組版をベースとしたオンデマンド方式が主流です。
デジタル組版とデジタル製版を結合させた環境で、プリプレス工程を進めることを「デジタルプリプレス」と言います。
出版印刷でも商業印刷でも、デジタルプリプレスは標準となっており、カラー画像の補正や加工、色校正紙の作成やその後の修正もアナログ方式より遥かに簡単です。
デジタル組版では、モニタ上で文字と画像を合わせて、ページのレイアウトイメージを確定できます。
イメージセッタを出力機にすれば、電算写植システムと同様に組版結果を印画紙やフィルムに焼き付けて出力することもできるので、便利です。
その後の工程には「フィルム原盤を出力してから刷版の焼き付けをする方式」と「データから直接刷版を作る方式」があります。現在では、直接製版フィルムを出力、または直接プレート(刷版)に出力するのが一般的です。
印刷の基本工程2.プレス工程
プリプレス工程の次に、印刷機を動かして印刷するプレス工程があります。単純な印刷作業と思うかもしれませんが、オフセット印刷とオンデマンド印刷には、作業の違いがあります。
オフセット印刷のプレス工程
まず、印刷前の準備作業として、用紙のセット、版の取り付け、インクの調整、インキング装置へのインクの充填を行います。
印刷のはじめは機械をゆっくり回し、見当合わせ、ごみ取り、湿し水や印刷濃度の調整などを行います。回転数を上げると、時間当たり何千枚の速さで刷り上げることができます。
印刷直後の紙はインクが乾ききっていないため、破れたり、インクが滲む可能性があるため、乾燥するまでは慎重に扱います。
また、室温や湿度によって微妙な色の違いが出るため、印刷工場は常に一定の温度、湿度が保たれています。
オンデマンド印刷のプレス工程
オフセット印刷に使用されるインクは液状ですが、 オンデマンド印刷で印刷に用いられるのは、粉末状のトナーです。
そのため、乾きやすく、汚れや裏移りなどのトラブルが起きにくいため、次の工程にスムーズに移ることができます。
印刷の基本工程3.ポストプレス工程
印刷後の工程をポストプレス工程と言います。この過程は、オフセット印刷とオンデマンド印刷の違いはありません。
印刷に使う用紙は、印刷物の仕上がり寸法よりも大きなものがほとんどなため、どちらの印刷でも、断ち割り、折り、化粧断ちといった加工が必要です。
ページものでは、折り丁の丁合い、綴じ、表紙巻き、三方断ちなどの加工を行い、冊子形態に仕上げます。書籍や雑誌など、部数やページ数が多い製本は、上製本、並製本という製本作業を行います。
上製本はハードカバーと呼ばれる製本のことで、本の中身をしっかりと糸でとじ、別仕立ての厚めの表紙でくるむ製本方法を用います。
並製本はソフトカバーと呼ばれる製本のことで、中身と表紙に接着剤を使って、くるんで留める製本方法を用います。
パンフレットの表紙や書籍のカバーには、製本前にラミネート加工や箔押し加工をすることもあります。
一般的な印刷工程とデジタル印刷工程の違いまとめ
一般的な印刷(オフセット印刷)工程とデジタル印刷(オンデマンド印刷)は、工程別に見るといろいろな違いがあることがわかります。
特に、オンデマンド印刷の工程は、オフセット印刷の製版の煩わしさをかなり軽減していますし、印刷後の工程移動もスムーズに行えることが特徴です。
今後、印刷手法はますます簡略化し、きれいな仕上がりになっていくでしょう。これまで必要だった特殊技術は要らなくなり、コストも下がっていくはずです。
この流れは、私たち印刷業界だけではなく、あなたの印刷会社を見る目も変えるかもしれません。
印刷会社が、印刷物を作る製造業と思っていたものが、印刷に対するノウハウや印刷物の最適な使い方を教えてくれるサービス業への変容、というイメージの変化です。
これまでの印刷の流れとこれからの印刷の流れを押さえておくことで、印刷会社に求めるものの違いが見えてくるかも知れません。
※何をもって、一般的な印刷と言うかは時代と個人の感覚によるので、違和感を感じた方はご容赦ください