2015年7月13日

なぜネット印刷は激安?オンデマンド印刷のメリットデメリット

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ネット印刷、オンデマンド印刷の特徴は安さ

10年ほど前から出始めたネットで注文する印刷通販スタイルは、印刷価格が安いことが一番の特徴です。

ネット注文での印刷通販のほとんどが、完全入稿データを自分で用意して、24時間ネットで注文、ネットで決済することで、印刷物を指定の日に安価で届けてくれる仕組みをとっています。

正式名称は決まっていないと思いますが、ネット印刷、オンデマンド印刷、なんていう呼び方は広がっていますね。

当初のネット印刷は1,000部~10,000部、紙はA4 or B3サイズのものが多かったのですが、最近では大ロットも増え、紙サイズや厚さも選べるようになってきました。

ネット印刷は、もちろんネットやコンピュータの普及に伴って増えている手法なのですが、なぜ印刷を安く提供できるのかご存知でしょうか。

今回は、使う人によってメリット、デメリットがあるネット印刷の特徴、そしてなぜ印刷を安く提供できるのかを解説していきたいと思います。

ネット印刷、オンデマンド印刷のメリット

まず、ネット印刷の謳い文句であるメリットの部分から見ていきましょう。

・安い
・短納期
・24時間ネットで注文できる

おおまかに言うとこの3つです。「安い」に関してはあとでたっぷり理由をご説明しますが、確かに通常の印刷会社が提供する価格に比べて安く設定されています。

次に「短納期」ですが、これまでの印刷会社では、納期は営業担当との話し合いによって決まることがほとんどでした。

・顧客が納期を伝えて、印刷会社が対応できるかどうか
・営業担当から納期を言われて、顧客が納得できるかどうか

というやりとりが発生します。これは、印刷会社が抱える印刷機の稼働状況を確認、調整する必要があるためです。ところが、ネット印刷は予め印刷から納品までの日数と価格がマトリクス状に決められています。

そのため、価格によっては注文から最短で1日で納品することも可能なのです。

最後に「24時間ネットで注文できる」ですが、急いでいる時には非常に便利な仕組みです。ネットが発達した現在は活用されて当たり前と思えます。

このように、ネット印刷には「安い」「短納期」「24時間ネットで注文できる」という3つのメリットがあり、このメリットが非常に大きいため、短期間でネット印刷会社が急成長をしているわけです。

今回はこのメリットの中でも「安い」に注目して、なぜ安く印刷物を提供できるのか、その理由を見ていきましょう。

ネット通販が安い理由1.ネット注文で営業担当者のコストを削減

まず一つ目の理由は、ネットを通じて全国どこでも24時間注文を受けられる体制を整えていることが挙げられます。

営業マンが営業をする必要はありませんし、注文内容は、紙のサイズ、質、厚さ、枚数、加工など、全て発注者が決めるため、営業担当者が応答する必要もアドバイスする必要もありません。

データ入稿後の基本的な調整ややりとりに関してはオペレーターが電話やメールで対応をすることが多く、全体的に人件費を減らすことが可能になっています。

また最近では校正をしないことで費用を安く抑える注文方法も増えています。

ネット通販が安い理由2.印刷機を持たないため投資コストがかからない

ネット印刷会社は、多くが自前の印刷機を持っていません。ではどうやって印刷をしているんでしょう?

それは、全国数十社~の大型輪転機などを持っている印刷会社と提携して、ネット印刷会社が発注を受けた印刷を代行、郵送してもらっているのです。

もし自前で印刷機を持つ場合、大量の注文を受けることを考えると、印刷機は大型のものを用意しなければいけません。オンデマンド印刷機で500万~1,000万円、オフセット印刷機だと輪転機で1億~2億円……。

さらに印刷機にはオペレーターも必要になります。年間の維持コスト、保守コスト、スペースも必要なため地代家賃もかかります。余程安定して印刷をこなさなければ、会社として成り立ちません。

現在の印刷業界の市場規模は約5兆円ですが、大日本印刷、凸版印刷という超大手2社を除くと、残りの市場を3万社弱で競争しています。しかも市場規模は年々縮小しています。

つまり、ネット印刷会社は投資コストを抑えつつ、機械余りを起こしている印刷会社に対して仕事を供給するスタンスを取っていることになります。

ネット通販が安い理由3.印刷物の同時製版で輪転機の空きを作らない

ネット通販は、オフセット印刷の輪転機を使う場合がほとんどです。先述した通り、複数の印刷会社の印刷機の空き状況を押さえているため、スポットで印刷を依頼することが可能になります。

印刷会社も輪転機を空けておくよりは稼働させたほうが良いため、格安で印刷を請け負うことになります。

また、輪転機の場合、1度の印刷で複数の印刷物を集約させることができます。同じ紙の種類で(なるべく)同じサイズの印刷物であれば、複数を組み合わせて製版する事が可能です。

これを面付けと言います。面付けに関しては、以下の冊子の印刷手法を見るとよくわかります。

面付け

テーブル席であれば10組みしか顧客が座れない人気食堂が、相席であれば40人まで入ることができるイメージです。しかも、それが近隣複数店舗のテーブルも使って……。

ネット通販の紙の種類やサイズが少ないことは、空いている輪転機に組み込みやすいという理由からです。また、納期が長いほど価格が安くなる仕組みも、その分空き状況に組み込みやすいためなのです。

ネット印刷、印刷通販のデメリット

さて、ネット印刷のメリットを見て、さらに1番の特徴である安さの理由もご紹介しました。ここで注意しなければいけないことは、ネット印刷と言えど万能ではないということです。

ネット印刷のデメリット1.最安価格に惑わされる

時々「業界最安値!」「価格交渉に応じます!」と謳うネット印刷会社があります。

確かに、特定の印刷物に関しては、界最安値かもしれない価格が提示されていますが、印刷物の種類やサイズは非常にたくさんあります。

「あるサイズの印刷はAネット印刷会社が一番安いが、違うサイズの印刷はB印刷会社が一番安い」ということもあります。

また、1週間後の納品であれば最安値でも、2日後の納品の場合は割高になる場合もありますし、折り加工や他の加工を加えると割高になる場合もあります。

このように比較すると、そもそも自分が欲しいものが最安にならないことも考えられます。

ネット印刷のデメリット2.対応する印刷物の種類が限定される

前述した通り、印刷物の同時製版により価格を安く抑えられることがネット印刷会社の特徴であるならば、印刷物の種類が限定されてしまいがちなことは想像できるはずです。

印刷物というのは非常に沢山の種類があり、シチュエーションに応じてサイズ、厚さ、加工を変えて発注したい場合があります。

そのため、安いからという理由で本当に必要だったサイズや加工を変えてしまうのはおかしな話です。

ネット印刷のデメリット3.印刷物の仕上がりにバラつきが生じることがある

ネット印刷は何十社という印刷会社と提携しています。そのため、以前に依頼したチラシを再発注した場合、前回とは違う印刷会社で印刷されることがよくあります。

その場合、印刷工場の環境によっては、インクの乾き具合などが変わり色味に違いが出たり、郵送の方法で印刷物の取扱いが丁寧じゃなかったり、なんてこともあるんです。

もちろん、色校を行っているネット印刷もありますが、最終判断を印刷のプロではない人に任せるのは……ちょっと厳しいですね。

ネット印刷のデメリット4.プロフェッショナルな対応に疑問

ネット印刷会社に勤める方は、印刷の現場作業ではなくデスクワーク業務が多くなります。

もちろん、印刷の現場経験がない方でも、しっかりと印刷に関して勉強している方も多く、基本的な対応には問題はないでしょう。さらに、恐らく印刷会社から現場経験の長いプロフェッショナルも引き抜いているはずです。

しかし、全ての方が現場での経験を通し、ノウハウの蓄積や問題の共有を行うことはできません。

特に、ネット印刷は完全データ入稿が前提になっていますが、一番やりとりが発生し時間を使うのはこのデータ入稿です。

たくさんのマニュアルを用意して、オペレーションコストを削減する努力をしているとは思いますが、最適なアドバイスを行ってくれる体制の会社はまだ存在していません。

ネット印刷、印刷通販のメリットデメリットまとめ

ネット印刷は、安く、パソコンだけで発注、決済ができて、印刷物を届けてくれるため、非常に便利だと思います。

ただし、使いこなすためには発注者がある程度印刷業務に対する知識を持っていなければいけないということと、完全データ入稿のハードルを超えなければいけないことがあります。

また、印刷物が既に決まっているものであれば良いのですが、印刷物を使った販促活動など、専門家のアドバイスが欲しい時は、物足りないサービスだと言えます。

私個人としては、何でもネット印刷会社を使えば良いとは思いませんし、反対に、普通の印刷会社だけでも良いとは思いません。

やはり、お金を出すものに関しては、ある程度の知識をつけた上で、状況に応じた物事の良し悪しや妥当性を判断する材料が必要になると思います。

メリット・デメリットを把握した上で、従来の印刷とうまく使い分けができれば良いですね。

参考:オンデマンド印刷・冊子印刷・製本印刷なら「ガップリ!」