2015年8月25日
印刷業界の市場規模と売上高ランキングによる将来展望
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日本の印刷業界の市場規模
今回は、印刷業界の市場規模や背景から何が見えてくるのか、そして印刷業界が今後どのようになっていくのか、というお話をしたいと思います。
日本の印刷業の規模を測りたい場合は、工業統計表を見ることが一般的です。平成24年度の工業統計表によると、印刷業界市場は、印刷業、製版業、製本業、印刷加工業、印刷関連サービス業で構成されています。
市場規模:約5兆2,300億円
労働人工:約280,000人
事業所数:約22,000社
ちなみに少し古いデータですが2015年版の市場規模マップによると、市場規模は約5.4兆円となり、通販、風俗、自動車整備の市場と同等です。
売上前年比では-1.1%となっていますが、現在の印刷業の業態のままで、これがプラスに転じていくことはないでしょう。
また、ブレイン・リサーチ&マーケティングの調査によると、都道府県別では東京における出荷額が突出していることに対し、事業所数の多さから成長率が極端に低いことがわかっています。
参考:株式会社ブレイン・リサーチ&マーケティング:印刷産業 10年分析(2/3)都道府県別の動向
印刷業界の企業売上高ランキング
次に、2019年の印刷業界の企業売上高をランキングで見てみましょう。カッコ内はシェア率です。ただし、この企業売上がそのまま印刷業界の規模に当てはまるかは不明です。
01位:凸版印刷:1兆4,647億円(約38.3%)
02位:大日本印刷:1兆4,015億円(約36.7%)
03位:トッパン・フォームズ:2,258億円(約5.9%)
04位:NISSHA:2,074億円(約5.4%)
05位:共同印刷:9774億円(約2.6%)
06位:図書印刷:524億円(約1.4%)
07位:日本創発グループ:511億円(約1.3%)
08位:共立印刷:461億円(約1.2%)
09位:朝日印刷:393億円(約1.0%)
10位:竹田印刷:3618億円(約0.9%)
参考:印刷業界の動向・現状・ランキングなど-業界動向サーチ
※業界動向サーチのデータを元にシェアを算出
これを見て、「えっ?」と思うかもしれませんが、現在印刷業界はこのような売上とシェアになっています。
現在の印刷業界の市場規模は約5兆円ですが、大日本印刷、凸版印刷という超大手2社を除くと、残りの市場を3万社弱で競争しています。しかも市場規模は年々縮小しています。
大日本印刷、凸版印刷の大手2社で、全体の75%以上を占め、上位10社で90%近くを占める市場構成です。
それでも、全国に3万社近くの印刷会社があるということは、それだけ地元や顧客に密着することで存在する印刷ニーズがあるということです。
逆に言うと、大日本印刷、凸版印刷が受注している仕事は大都市圏中心で大手企業のものが多いのですが、その売上がいかに大きいかということがわかります。
印刷業界は大手の動向によって左右されやすく、その1社の印刷物を数%減らすだけで業界全体で数十億規模の影響を受ける可能性があるわけです。
印刷業界の市場規模と売上高ランキングからの考察
さて、これらの市場動向を見てみると、やはり印刷業界自体の縮小傾向がよく分かる結果になりました。
こちらもブレイン・リサーチ&マーケティングのデータですが、平生24年の売上高とその構成をベースにして、10年前の平成14年データ、そして、10年後の予測データをグラフ化したものです。
参考:株式会社ブレイン・リサーチ&マーケティング:印刷産業 10年分析 (1/3)
令和4年(2022年)には、市場規模が4兆円にまで縮小すると予測されています。このような予測の正確性がどれほどのものかはわかりませんが、印刷業界にいると、単純な紙の印刷物の縮小は肌で感じます。
このグラフを見てわかる特徴は、利益、人件費が大きく減っている割に、原材料費が減っていません。
つまり、業界全体の人を減らして効率化を図りつつ、利益圧縮もしていかなければいけない状況だということです。
ところが、原材料費が同じ比率で落ちることはありません。これはかなり厳しいグラフですが、現実です。
また、市場が常に寡占状態だということも大きな問題でしょう。理由としては、印刷出荷額が極端に大都市圏に集中しているためです。
地方においては、印刷業自体がニッチ産業になりつつあると言っても良いかもしれません。
印刷業界の将来を考える
前述しましたが、印刷市場が現在の印刷業を続けていて市場規模がプラスに転じていくことはないでしょう。
業界全体が印刷事業に続く柱を作っていけるかが、大きな課題になります。
今後も企業はペーパーレス化を進めていくため、私たち印刷業界がとるべき方向は3つにわかれています。
1.電子書籍、DB解析、機能性商材など、これまでのデータとナレッジを合わせたIT製品や新製品の提供
2.印刷を主軸においた販促などのソリューション提供やコンサルティング業務
3.極限までコスト圧縮をした印刷営業に特化した業務(ネット印刷など)
この3つのどれも実現できない印刷会社は、残念ながら淘汰の対象になります。
なかなか厳しい現実だとは思いますが、私個人は業界のこの状況を悲観していません。なぜなら、印刷業界はとっくに新しい方向性に舵を切っているためです。
印刷業界と3つの方向性のお話は、今後あなたが印刷会社を選定するために必要な情報とともに、また別で展開したいと思います。