2023年3月7日

表記ゆれを防ぐには?表記統一で気を付けたい9つのポイント

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

一つの文章や冊子の中で、同じ意味なのに複数の表記が混在していることを「表記ゆれ」と言います。

例えば、「こと」と「事」、「行う」と「行なう」、「コンピューター」と「コンピュータ」など、表記にばらつきがあると、読者はそれぞれ違う意味なのかと混乱してしまい、読みにくく・わかりにくい印象を与えてしまいます。

読者がストレスなくスムーズに読める文章にするためには、文章全体の表記をそろえる「表記統一」を行い、このような表記ゆれをなくすことが大切です。

そこで今回は表記ゆれを防ぐために気を付けたい9つのポイントをお伝えします。

表記ゆれを防ぐために気を付けたいポイント

1.漢字とひらがな

表記ゆれで最も多いのが、漢字とひらがなの使い分けです。

「とき」と「時」、「こと」と「事」、「ください」と「下さい」などは特に表記ゆれが生じやすいです。

後ほどご紹介する記者ハンドブックなどのガイドラインを参考にしながら、はじめのうちは思いつく範囲でルールを決めていきましょう。

また、社内用語や専門用語などは表記が決まっている場合もあるため、そちらに従うのがよいでしょう。

2.似た意味の漢字

同音異義語の場合、意味を明確に理解していれば問題ありませんが、「生かす」と「活かす」、「沿う」と「添う」、「誌面」と「紙面」など、似た意味の漢字は混在しやすいです。

この場合にはこちらを使う、というように使い分けの基準を設けておくとよいかもしれません。

3.旧字体・新字体

従来の複雑な「旧字体」を簡略化したものを「新字体」といい、「常用漢字」とも呼ばれています。

旧字体と新字体はどちらも間違いではないため、この後ご紹介する「常用漢字表」をもとに表記ルールを決めてもよいですが、旧字体は特に「櫻」と「桜」、「龍」と「竜」、「濱」と「浜」、 「齋」と「斎」など、地名や人名などで使われることが多いため、固有名詞の場合には旧字体を尊重するのがベターです。

旧字体と新字体の例

仮に直す場合も、表記にこだわりを持っている方もいるかもしれないので、本人の了解を得た上で直すようにしましょう。

中には上の部分が「土」になっている「吉」や、「一点しんにょう」の「邉」「邊」など、PCでは変換できない文字もあります。

外字エディタなどを使って作ることもできますが、印刷の際に文字化けしてしまう可能性もあるので注意が必要です。印刷会社に依頼している場合は、その旨をあらかじめ相談しておきましょう。

▼新字体と旧字体については以下の記事でもご紹介しています。

4.カタカナ表記・外来語

日常的に使っているカタカナも人によって表記が異なります。

特に「コンピュータ」「プリンタ」「フォルダ」「ユーザ」のように末尾の音引き(伸ばし棒と呼ばれる「ー」)を省略するかどうかは表記ゆれが起こりやすく、業界や会社によっても推奨される表記が異なるため、一度、社内での正式な表記を確認しておくとよいでしょう。

「ソフトウェア」と「アプリケーション」など、使い方の似ている言葉も整理しておくと、混乱の防止になります。

また、外来語の場合は、 「バイオリン」と「ヴァイオリン」、「ギリシャ」と「ギリシア」など、元となる言語によって、発音とカタカナにしたときの表記が異なるケースもあるので注意が必要です。

外来語ではありませんが、「犬・いぬ・イヌ」「猫・ねこ・ネコ」のように、漢字・ひらがな・カタカナすべての表記が混在する場合もあります。

生物学的な名称として使用する場合にはカタカナ表記にすることが多いようですが、一つの文章の中では統一しておくとよいでしょう。

5.送り仮名

漢字の送り仮名にはある程度の正誤基準はあるものの、例外も見受けられます。

例えば、「おこなう」は「行う」と書くのが正しい表記とされていますが、「行って(おこなって)」は「行って(いって)」と誤読される可能性があるため、「行なって(おこなって)」という表記を認める国語辞典もあります。

また、「取り扱い」「取扱い」「取扱」、「引き継ぎ」「引継ぎ」「引継」など、動詞として使う場合と名詞で使う場合で推奨される表記が異なったり、公用文においては基準が定められていたりするケースもあります。

6.数字の表記

数字は漢数字と算用数字、全角表記と半角表記、カンマの有無など表記ゆれが起こりやすいです。

数字は横組みなら算用数字(1、2、3…)に置き換えると読みやすくなります。

ただし、一つ、二つ、一人、二人など日本古来の数え方をする場合は、あえて漢数字を使うこともあります。算用数字は「ひぃ、ふぅ、みぃ…」と読まないからです。

掲載媒体の雰囲気や読者層、内容などによって適した表記も変わってくるため、執筆者とも相談してルールを決めておくとよいでしょう。

縦組みで算用数字を使う場合は、1ケタのときは1マス分全角で、2ケタのときは1マス分半角で横に並べ、3ケタ以上は全角で縦に並べる場合もあります。4ケタ以上でコンマを入れたいときは、左下より右下に入れるほうが読者にとってわかりやすいです。

数字の表記例

しかし、ケタが大きい場合や複雑な数字の場合は縦組みで算用数字を使うと読みにくくなってしまうこともあります。

そのような場合には漢数字を使いましょう。その際、「千九百六十五年」と書いても「一九六五年」と書いても、どちらも間違いではありません。

7.ルビ

漢字の読み方を表すふりがなのことをルビと言います。

「乖離(かいり)」「研鑽(けんさん)」「咀嚼(そしゃく)」など常用漢字外の難しい字や、「田中大樹(たなかひろき)」「枚方市(ひらかたし)」といった人名・地名などの固有名詞にはルビを振ると、読者もスムーズに読むことができて丁寧です。

どのような漢字にルビを振るのか、基準を設けておくといいかもしれません。

ルビの表記例

初出のときだけルビを振るという方法もありますが、その文字の登場回数が少ない場合はその都度ルビを振るのも親切です。「この字、なんて読むんだっけ?」とならない工夫が重要と言えます。

技術系の原稿では難しい専門用語もあります。技術職の人にはわかっても、他部署の人にはわからないケースも考えられるので、ルビをつけるといいでしょう。

また「放射能」と「放射線」のように読み方は簡単だけど、意味や違いが分かりにくい場合は注釈をつけるのも読みやすくする方法の一つです。

8.略語

「スマートフォン」と「スマホ」、「アプリケーション」と「アプリ」など、略語がある場合には読者層や内容に合わせて表記を統一するのがいいでしょう。

「スマートフォン(以下、スマホとする)」のように、初出のタイミングで明記しておく方法もあります。

9.小文字・大文字、全角・半角

例えば、「ウェブ」という言葉は「Web」「WEB」「web」という3通りの表記が考えられます。

一般的には「Web」という表記が使われることが多いですが、強調したい場合や見出しに使用する場合には「WEB」が使われることもあるため、あらかじめルールを設定しておきましょう。

また、「YouTube」「iPhone」など、大文字と小文字が入り混じっているものも注意が必要です。これらは固有名詞のため、公式の表記に合わせるようにします。

「」や()といった記号も、全角・半角の表記を統一しておくようにしましょう。

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表記ゆれを防ぐ方法

表記ルールをまとめる

ここまでご紹介した9つのポイントのルールを決めたら、表にまとめていきます。

表記ルールをまとめたものは「表記統一表」「表記マニュアル」「表記ルール表」「表記統一リスト」と呼ばれ、このように明文化してまとめておくことで、迷ったときに素早く参照でき、引き継ぎや異動の際にもスムーズです。

表記統一表を作成するには、まずは表記ゆれが起きやすい言葉を書き出して五十音順に並べ、推奨する表記と使用しない表記などのルール、活用例や例外などを記載していきます。

ExcelやWordなどで作成して、担当者間や著者と共有しておくのがよいでしょう。

外部のルールやガイドラインを参考にする

正解のないものについてルールを決めることは、思っている以上に迷うことが多いかと思います。

担当者の感覚頼りになってしまう部分もあるため、そんなときは信頼できる外部の基準を参考にするのもおすすめです。

文化庁|常用漢字表の音訓索引
文化庁|送り仮名の付け方
文化庁|外来語の表記

以下のようなルールの拠り所になる1冊を手元に置いておくのもいいかもしれません。

『記者ハンドブック 第14版 ―新聞用字用語集-』(一般社団法人共同通信社 編著)
『日本語表記ルールブック(第2版)』(日本エディタースクール 編著)
『日本語スタイルガイド(第3版)』(一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会 編著)

ダブルチェックを行う

書いた文章を読み返すことが重要ですが、一人でチェックしているとどうしても見落としが出やすくなってしまいます。

複数人でチェックすることで見落としを防ぎ、より正確に表記ゆれを防ぐことができます。

Wordの表記ゆれチェック機能を使う

表記ルールを決め、表記統一表を作成しても、どうしても人の目だけでは確認漏れが発生してしまうこともあります。

より正確にチェックするためには、Wordの「校閲機能」の活用するのも方法の一つです。

以下の記事で詳しい使い方をご紹介していますので参考にしてみてください。

まとめ

今回は、表記ゆれを防ぐために気を付けておきたいポイントと表記統一の方法についてご紹介しました。

一度表記統一表を作成しておけば長く使うことができますし、担当者間での表記ゆれの防止や、引き継ぎの効率化にもつながります。

読者にとっても読みやすく、わかりやすい文章になるため、ぜひ参考にしてみてください。

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